先日、母親から薦められて本を買った。


うちの母親は俺が出版社に勤めているっていうのに、

本にまったく興味がないらしく、

本をいくら薦めても読んだためしがない。


そんな母親から薦められたのは

藤田宜永・著『夢で逢いましょう』


舞台は現代なのだけれど、

60代の主人公たちがしょっちゅう過去の思い出に浸るので、

昭和20~30年代の東京の様子がチョコチョコでてくる。


しかも、その主人公たちが幼少期に過ごしたのが

どうやら現在の白金あたりらしく、

それはもうまさに麻布で生まれ育ったウチの両親たちの

幼少期のそのものを描いた設定になっているらしい。


俺も本を読んでいて

小さい頃から祖父母や両親に聞いていた古き良き時代の話を

藤田さんが上手に生き生きと描いてくれているので、

当然産まれていない俺にもなんだかひどくノスタルジーをカンジさせる。

まさに、文章の3D化といってもいい作品になっている。


さて、そんな郷愁に浸りながら読み薦めていくと、

と、あるエピソードの一つに

両親の離婚で母親に引き取られたものの、

その後母親が死んでしまい、父親方に引き取られる家族の話がある。


そのシーンで、登場人物の一人が

「逃げた女房に未練はないが お乳欲しがるこの子はかわい」

と口ずさむシーンがある。


どうやら、その当時の流行り歌のワンフレーズらしいのだが、

なんとなく今の自分の状況に照らし合わせて

妙に親近感を覚えるフレーズ(笑)。


そこでさっそくググってみたら、

これ、一筋太郎の「浪速子守唄」という曲の1フレーズらしい。


実は俺の立場とは逆で

女房が子どもを置いて出て行ってしまったけど、

男伊達らに子育てする亭主の唄らしい。


それにしても、

「逃げた女房に未練はないが お乳ほしがるこの子はかわい」

である。


そう子どもは無条件にかわいい。

妻と今後も何があったとしても、

息子は何も悪くないし、このままスクスク両親の愛情をカンジながら育ってほしい。


「引き離しの女房に未練はないが

 “お父しゃん!”となつく、この子はかわい」