南相馬市の中心部から6号線を南下しもう一つの目的地を目指します。
国道沿いには様々なお店が軒を連ねています。
家電製品量販店、全国展開の洋品店、アミューズメント施設、各車ディーラーetc...
しかし僕がお伺いした時はほとんどのお店がシャッター店舗となっており人の気配
はほとんどありませんでした。
※現在は営業を再開されているお店もあります。
自走しながら「本当に今国道を走っているのだろうか」と目を疑う光景がしばらく続
きます。
そういった光景を横目に目的地へと車を走らせると、さらに衝撃を受ける光景が目
に飛び込んできました。
初めは遠目に見えたその「大きな物」も徐々に近づいて来ると鳥肌が立ちしばらく
身震いが止まりませんでした。
福島県入りしてこれまで見てきた光景とはまた違う衝撃です。
皆さんの生活の側にも必ずある送電鉄塔を想像して下さい。
赤と白のあれです。
あの約60メートルほどある鉄塔が゛2つ折れ″になりそのままの状態で静かに
立っていました。
福島へ入り、初めて感じた恐怖を憶える光景でした。
今でもたまに夢で出てきます。それぐらい衝撃の光景でした。
その2つ折れになった送電鉄塔から目と鼻の先に今回お伺いさせて頂きたかった
「ビジネスホテル六角」さんがあります。
ここには「原発事故から命と環境を守る会」の代表を務めていらっしゃる大留さん
がいらっしゃいます。
ビジネスホテル六角さんは大留さんがオーナーをされておりここを拠点に地元の
皆さんと協力し、食料や物資を中心とした支援を行っていらっしゃいます。
ビジネスホテル六角さんの場所は原発から20kmと200mの場所に位置しており
ホテルの前を通る国道6号線を少し先に行くと目視できる程の距離に立ち入り禁止
のバリケードが張られています。
埼玉に住む仲間から情報を聞き、時間が全く読めない状態で動いていた為に事前
のアポイントは取っておりませんでしたが南相馬に今回お伺いした事情をお話する
と嫌な顔ひとつせず、決して見た目が誠実そうには見えない僕を何一つ疑う事なく
「よく来たね。冷たい飲み物を入れるから休憩していきなさい。」と優しいお言葉まで
掛けて下さいました。
ホテルに隣接されている喫茶店が支援の拠点となっており、厨房と反対側の休憩
スペースには全国から送られてきた物資が゛少量゛保管されておりました。
食料などの支援物資は届いたその日のうちに仮設住宅の数と人数を考えながら
配られていくそうです。
お伺いした際に大留さんと一緒に力を合わせボランティア活動をされている地元の
方もいらっしゃいました。
その方も色々とお話を聞かせて頂く事が出来ました。
「大阪から遥々有難うね、つらい事も多いけどこうして様々な地域の方が南相馬を
訪ねて下さる事は本当に嬉しくて...」と嬉しそうにお話をして下さいました。
全国から届いた物資や食料が仮設住宅にどう配られていくかというお話や南相馬
の伝統的な行事でもある相馬野間追 のお話など。
他にもたくさんお話頂きましたが、どれも南相馬に生きる力強いお言葉でした。
その方はおっしゃいます。
私達も色々と頑張っているけれど自衛隊の方には本当に感謝している。
自衛隊の災害派遣車輌とすれ違う時は必ず頭を下げていると。
その表情、言葉は深く印象に残りました。
大留さんは口数こそ少ないのですが、言葉では表さない優しさや信念をお持ちに
なられている方だと感じました。
お話の中でたまに出る笑顔はとても優しく、その優しい表情から出る一言一言は
南相馬の現状や歴史、先の見えないこれからの事も全て含め愛情に満ちている
ように思えました。
心の底からその街の歴史や文化、人が好きでなければ窮地で先頭に立って乗り
越えていく事は出来ないと思います。
今回お持ちさせて頂いた物資はレトルト食品、水、虫よけ。
シャボン玉も仮設住宅に住む子供達にとお持ちしましたが、゛僕の押し付け支援゛
となってしまいましたので保育園へ持って行く事となりました。
現地では思った以上に必要な物がたくさんあります。
しかし、こちらの勝手なイメージや願望で物資をお持ちする事は逆に気を使わせ
てしまう事になります。
様々な物が善意で届く被災地、勝手なイメージでお届けしても「いりません」とは
言われません。
心の中で「せっかく頂いたのに申し訳ない」と自己嫌悪にさせてしまうだけです。
必要とされるニーズを事前に確認し、必要な場所へ届ける。
今回の動きで僕が最も反省した点です。
何一つ゛無駄゛には出来ない状況なのです。
なかよし保育園で園児達と遊ぶお約束もさせて戴いていたので30分程しか
六角さんにいる事は出来ませんでしたが、この30分はとても貴重な時間に
なりました。
帰り際、突然お伺いして申し訳ありませんでしたと大留さんにお伝えさせて頂き
ました。
すると、またいつでもおいでよ!と笑顔で見送って下さいました。
涙腺は強い方なのですが自然と押し出す涙をこらえるのが大変でした。
゛笑顔には笑顔で応える゛今回の動きで決めていた自分の中での公約を何とか
守りビジネスホテル六角さんを後にしました。
大留さんの所で戴いたさつまいものお饅頭はとても優しい地元の味でした。
原発から20kmと200mにあるその場所から自衛隊車両が多く走る国道6号線を
北上し、2つ折れになった送電鉄塔を横目になかよし保育園と車を走らせます。