M.R.M.C 第9話 ~マッチ売りの青年とジム・モリソン~ | ロックの情報ブログ。 l バブルモア・レコーズ【泡の夜の幻想】

M.R.M.C 第9話 ~マッチ売りの青年とジム・モリソン~

BRMC - Six Barrel Shotgun


あれは3年前ぐらいかな?
井の頭公園でマッチを売る男がいた。
ひとつ、100円。

ただのマッチじゃなくて、マッチの箱に絵が描かれているんだ。
まさに絵画風のものから、イラスト風なもの。
100種類くらいあったかな?

その男が描いているそうだ。小さなマッチ箱をキャンパスにして。
その中でも僕が気に入ったのが、電車の切符をモチーフにした作品だった。
切符の駅名が書かれる部分が『天国』になっている。

「天国行きの切符さ。このマッチがあれば天国へ行けるよ。」
その男は嬉しそうに、説明してくれた。

下の方にはJR南日本。洒落も効いている。
反対の面には可愛らしい天使が、お花を持って空を跳んでいる。
僕はそのマッチを買った。

他にも、サザエさんの猫、タマをモチーフにした作品や
ロンドン工事中と銘打った、クラッシュのアルバム、
ロンドンコーリングのパロディな作品も買った。

あのジャケットにあるギターの代わりに
スコップを振りかざしている粋な作品だ。

他にも素敵な作品ばかりで、その男に魅力を感じたんだ。
そして、後日、その男と酒を呑む事になった。
場所は高円寺の居酒屋、石狩亭。

いろんな話をした。
男は沖縄から数年前に上京してきたらしい。
その話に、またもや悪魔が出てきたんだ。

悪魔の名前はジム・モリソン。
まだ沖縄にいた頃、ヤマハのジョグに彼は乗っていたそうだ。
当時、美術大学に通っていた彼は
まわりのクラスメイトや先生たちに天才と称され、もてはやされていた。

彼の描く絵は、花びら一枚一枚の色が違う花が咲くお花畑や
太陽が照らす暗い街、月明かりで白く染まった夜の街
褐色系の色のみを使った一本の道を行く男の後ろ姿…

その色使いが産むサイケデリアが
異次元の世界を感じさせると評価されていたようだ。

だけど彼は、そんな毎日に嫌気がさして
ジョグに乗ってひたすらアテもなく走っていたらしい。
その時、声がしたそうだ。

「おまえが表現しているのはアーティスティックな世界感じゃないんだろ?
人間の本質的な部分の表現だ。違うか?」
まさにそうだった。

誰も自分の作品の意味を理解せず、表面的な部分で評価され、しかも天才などと。
その苛立ちが積もっていたんだ。

彼はジム・モリソンに聞いた。
どうすれば自分の表現を分かってもらえるのかを。

「おまえの回りはアートが好きな奴ばかりだ。
 もっと多くの種類の人間の前で表現してみろ。
 その方法は絵じゃなくてもイイんだ。」

The Doors - Light My Fire



その言葉が、男のハートに火を付けた。

男は東京に行く事を決めた。
まずばフェリーで福岡に渡った。
そこから50ccの原付バイクのジョグで
ひたすら東京を目指した。
夜はテントを張り野宿、眠りにつく前は、ジム・モリソンと話しをする。
沖縄を出発してから二ヶ月。ようやく東京に到着したそうだ。

彼は旅の間に、ジム・モリソンから歌を教わった。

彼はまず音楽で表現する事をした。

後で知る事になるんだけど
環七の大鷲や、東八の大蛇と一緒に音楽をしていたんだ。

彼はライブのステージで何度も叫ぶ。
「こんな寂しい夜に…っ!」

誰も理解してくれない、そんな孤独感から出た言葉だったんだろう。

彼は音楽もしながら、マッチ売りの青年をしていた。
路上でのマッチ売りは、本当に色々な人たちがマッチ箱に描かれた絵に、
気軽に感想を言ってくれるし、世間話でも会話も弾むそうだ。

「自分以外にも何かを表現しようと、もがく人達がいるのが嬉しい。」
と、彼は言っていた。

そう、あれからずいぶんと会ってなかったんだけど
最近、また出会う事になった。

高円寺の居酒屋で。
そこには、その男と
ムサシノ・レーベル・モーターサイクル・クラブの三人もいたんだ。
その話は、また今度にしよう…



続く…




by マニオ