「解散風」・党利党略解散と天皇の政治利用
アリの一言 2026-01-12 03:00:00
突然「解散風」が吹き始めました。風元は「首相、衆院解散検討 2月上中旬投開票」と1面トップで大きく報じた10日付の読売新聞です(写真)。他のメディアが一斉にこれに追随しました。
読売記事のネタ元は「政府関係者」というもっともあいまいなもので、どのように「検討に入った」かなど詳細は不明です。読売の願望か、政権(高市筋)からの要望かは分かりませんが、この記事で解散への軌道を敷こうとする政治的意図は明らかです。いかにも読売新聞です。
いま「解散風」をふかせることにはもう1つ政治的思惑があるでしょう。それは米・トランプ大統領のベネズエラ侵略の蛮行に対し、日米軍事同盟によって一言も批判できない高市首相への助け舟です。ニュースの焦点を「トランプの蛮行」から「解散・総選挙」へ移そうとするものです。
読売の記事は「首相が1月の衆院解散を検討しているのは、内閣支持が高水準で推移していることが背景にありそうだ」と書いています。朝日新聞デジタルも、「高支持率の間に早期解散に踏み切りたいとの考えに傾いた」(11日付)としています。
本当に1月解散を強行すれば、大義はまったくなく、ただの「高支持率解散」と言うしかありません。自民党の党利党略解散であることは明々白々です。
「解散権は首相にある」「解散は首相の専権事項」という俗論がまかり通っていますが、これはたいへんな誤りです。
憲法が「衆議院の解散」について規定している個所は2カ所あります。1つは、衆院で内閣不信任案が可決された場合(または信任決議案が否決された場合)、「内閣は…衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」としている第69条です。
これによる解散は「69条解散」と言われます。正当な解散ですが、過去に4回しかありません。今回読売が煽っている解散ももちろんこれではありません。
もう1つの憲法上の規定は、天皇の「国事行為」の内容を定めた第7条です。「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う」として10項目挙げていますが、その3番目にあるのが「衆議院を解散すること」です。
この条項を根拠にした解散は「7条解散」といわれます。
この条項によって、天皇に「助言と承認」を与える内閣、その長である首相に解散権があるかのように自民党が主張し、それが通用し、「7条解散」が繰り返されているのです。
しかし、憲法学者からは次のような指摘がされています。
「憲法69条以外の解散については、憲法学では①内閣の重要案件(重要法案もしくは予算案)が否決もしくは審議未了になった場合、②総選挙時の争点でなかった内政・外交上の新たな重要課題が生じた場合、③内閣がその基本政策を変更する場合、等に限られている」(畑安次金沢大教授『日本国憲法 主権・人権・平和』ミネルヴァ書房)
「高支持率解散」がこのどれにも該当しないことは言うまでもありません。
にもかかわらず、自民党の党利党略解散が違法とされることはありません。
なぜか。憲法第7条があるからです。
すなわち憲法第7条(天皇の国事行為)が自民党(時の政権)の党利党略解散の隠れ蓑になっているのです。
言い換えれば自民は「天皇の国事行為」を利用して党利党略解散を繰り返してきたのです。
ここに、自民党政権(国家権力)にとっての「象徴天皇制」の存在意義の1つがあります。
したがって党利党略解散をなくする唯一の方法は、憲法を改正して第7条の3番目を削除することです。
そしてそれを入り口に、「天皇の国事行為」全体、さらには「象徴天皇制」自体の廃止(憲法第1条~8条、第88条=皇室財産・費用の削除)へ議論を進めることです。
それが民主主義(主権在民)にとって不可欠の課題です。
《お知らせ・お願い》(再録)
『象徴天皇制を考えるⅢ』を自費出版しました。前著Ⅱ以降、2019年6月~25年9月までの「アリの一言」から「天皇制」に関するものをまとめたものです( ソフトカバー、B6判、356ページ、1200円<送料込み>)。
ご希望の方はメールまたはお電話でお申込みください。件名に「本希望」とお書きいただき、冊数、ご住所、お名前のご記入をお願いいたします。振込用紙を同封させていただきます。メールアドレスは、satoru-kihara@alto.ocn.ne.jpです。電話は09029009967です。今月中に郵送いたします。よろしくお願いいたします。
関連記事
2026年1月11日 (日) 総選挙のキャスティングボート(植草一秀の『知られざる真実』)
2026年1月13日 (火) 高市内閣弱体化大作戦(植草一秀の『知られざる真実』)
本日のワーカーズブログ
