「離れないで…」
触れたその手は震えていて。
【NoRoom】
「大丈夫ですか」
少し、激しかったかもしれない。薄い胸板を上下させながら成瀬さんは額に張りついた髪をゆっくりとかきあげた。
「大丈夫…です」
うっすらと浮かべたその笑みにすら、不思議な感情を抱いてしまう何かが彼にはあって。ふと気づいた時には消えてしまってはいないだろうか、と不安に思う俺はやはりおかしいのだろうか。
儚い存在をそっと繋ぎとめるよう、俺はベッドの上の彼を抱きしめる。
柔らかくしなる腰にも左腕を沈めてやると、果てたばかりの彼はその細い身体を震わせた。
「すいません…」
「まだ、続けますか」
少しからかうように言うと、小さな耳が朱色に染まった。
「仕事が…」
「わかってますよ」
生真面目に答えてくれる彼に微笑みかけてやる。
今はまだあまり無茶をすることは出来ない。
二人とももちろん明日は仕事があるし、なにかと忙しい身だ。
職種も別々なうえ泊まり込みも多い。
正式に付き合いはじめたとはいえ、会える時間が急激に増えたわけではなかった。
それでもこうして身体を重ねお互いを感じるたび、どうしようもない幸福感に満たされることができた。
「芹沢さん」
いったん体勢を整えるためにそっと成瀬さんの上から降りようとした時。
彼が擦れた声で俺の名を呼んだ。
呼んで、ゆっくりと彼も身体を起こす。
「どうしました」
尋ねてみても俺とは目を合わせず、俺の後ろで丸い塊になっていた掛け布団を自分のほうへと引き寄せた。
そしてふっと腰を浮かせた瞬間、成瀬さんは高く両手をあげ同時に座っている俺の上にまたがった。
ふわり、と一枚の掛け布団が俺たち二人を包みこむ。
「な、成瀬さん…?」
ただたじろぐ俺をみて微かに笑ったあと、彼は俺の首に腕をまわし静かに俺の目を見つめた。
「まだ、離れないで…」
一度下にゆっくりと沈みこみ、上目遣いで俺の唇に視線を絡める。
そのまま下からねっとりと舐められ、そしてすぐ横では彼の手が力の入らない俺の手に添えられた。
その手は、震えていて。
そしてようやく、俺は気付いた。
「成瀬さん…っ」
ぎゅっと抱きしめ返し肌と肌とをこれ以上ないくらい密着させる。
彼のいっぱいいっぱいの甘えをいっぱいいっぱいの愛情に。
二人を覆う布団の中は息も吸えないほど温かく湿っていて。
外界から隔離されたその空間で俺は何度も成瀬さんを抱きしめた。
彼が寂しくならないよう、彼が不安にならないよう。
隙間ができたらそこを埋めまた彼の身体に唇を寄せる。
「離しません、一生」
きゅっと結んだ手を離さないまま、成瀬さんが俺を見上げてやわらかな笑みを零した。
甘えるのが苦手な彼の精一杯の甘え。
すべての肌を合わせてもあなたの心と溶け合うことは出来ないのかもしれないけど。
1ミリも無い俺とあなたの間に、甘えくらいは欲しいから。
「愛してます」
「私も…」
願わくは、永遠の、愛を。
Fin...
魔王熱、冷めておりません(笑)
むしろサントラとか聞くたんびに想い起こして吐きそうなくらい萌えております(・∀・)
が、同時に魔王独特の切なさが沸き起こり目から汗が…。
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