俺、好きなんだけど。
【夢なら素直に言えるのに】
「あ、翔君これなんてどう?」
「ん?…っこれずっと欲しかったやつだよ!買わない?智君とペアルックって最高じゃん!!」
「そんなに嬉しい??…じゃあ買っちゃおっか!」
最近仲良いな、あの二人。
これが最初の感想だった。ある時期を境に急に櫻井と大野がくっつき始めたことに、別に疑問なんて持っていなかった。元から嵐はメンバー同士が仲良いし、それが当たり前だったから。
でも、すぐにわかったんだ。
きっと二宮も相葉もとっくに気付いてる。
それでいて何も言わない。
俺がそれを偶然知った時、ショックで動けなくなったのに……。
二人は、付き合っていたんだ。
もちろん、そのこと自体は喜ばしいことだと思うし反対もしないけど。
だけど問題があるとすれば……それは俺が、大野のことをずっと好きだったってこと。
「あ、大野君!マネージャーさんが呼んでたよ?」
ただの業務連絡。それでも今は、大野と話せることが嬉しかった。
大野はカタログ雑誌のようなものから顔をあげ、ありがと、と短めに返事をして急いで楽屋を出ていった。櫻井はいってらっしゃいとだけ呟くと名残惜しそうな目をして大野の後ろ姿を追っていた。
こういう光景を見た時、嫌でもあの日を思い出してしまう。
シャワールーム。
小部屋がいくつか横に並んでいて、その前には服を置く籠だけが無造作に置いてある場所。
俺はその日、籠に時計を忘れたまま楽屋に戻っていた。いつもならそのまま忘れて次の仕事場に行っちゃうんだろうけど。
もう仕事は終わり、後は片付けて出ていくだけだったのに加え、後からその楽屋を使う人がいなかった為に俺らは久しぶりにゆっくりとくつろぐことが出来ていた。
他のメンバーはそれぞれ好きなことをやっていて。その中に櫻井と大野はいなかったけど、多分シャワールームを使ってるはず。
もしかしたら会えるかな?
そんな期待が俺の中に浮かんできた。
そして俺は、緩んだ顔を隠しながらシャワールームへと向かった。
で、入った瞬間聞こえた声は。
「好き」
え?
思わず足を止めた。
「…わかってるよ」
押し殺して話す二人。
「智君は、俺のことどう思ってんの?」
「それは…前言ったじゃん…」
イジワルそうな櫻井の声と恥ずかしそうな大野の声。
二人ともちょっといつもと違う。
「ほら、言ってよ」
「……翔君のこと、好きに決ま…っん、ぁ…」
大野の言葉が終わらぬうちに激しく響きだす衣擦れの音。
心臓が破裂しそうだった。
二人とも…何して…
「…ぁ……翔君…」
聞いたことのない甘ったるい声。
心臓が跳ね上がった。
「智君………やっていい…?」
櫻井が囁いた。
俺は大野の返事がないことを切実に祈った。
だけど。
「…………して……」
俺は、逃げ出した。
たっぷり時間を費やして、二人は楽屋に戻って来た。
俺が視線をやると待っていたかのように大野と目が合った。そして、こっちに近づいてくる。
もしかして、バレた?
二人の行為を途中とは言え盗み聞きしていた罪悪感が、今になって急に体中を巡り出した。
これは、やばい。
ついに大野が目の前までやって来た。
「松潤…」
「な、なに…?」
俺の顔は、多分真っ赤になってる。
大野が俺の目線に合うように身をかがめた。
そして。
「大丈夫?」
「…へ?」
「時計、シャワールームに忘れてたよ?」
何食わぬ顔でシャワールームと口にした。
「…ありがと」
これが、俺の精一杯だった。
「俺さ、これからホテルらしいんだけど、みんなはどうする?」
さっきのマネージャーからの事伝えらしい。
みんなも久しぶりに全員で、って感じで同意した。
シャワールームでのことはもう忘れよう。
ホテルのベッドの上でぼんやりと考えていた。
でも夢でなら……。
俺はそのまま、瞼を閉じた。
「松潤?」
………
「松潤ジュース買った?」
………え?
「大野、君…?」
ぼんやりと辺りを見渡すと、そこはホテルの廊下だった。
目の前には大野がいて。背後には自動販売機があった。
夢?
なんとなくそう思った。
「夢なら……」
醒めないでくれ。
回りには誰もいない薄暗い廊下。大野と二人っきり。
俺はゆっくりと大野の目を見据えた。
「松潤…?」
大野も俺の何かがおかしいことに気付いたみたいだった。
側にきて、俺の顔を覗き込んでくる。
心配そうな上目遣いで…。
夢でなら。
君を手に入れられるかもしれない。
俺だけの君に…なってくれる?
「っ!痛ー…ま、松潤?」
俺は大野の手首を掴み、そのまま廊下の壁に押し付けた。と同時に大野が持っていた缶ジュースが滑り落ち、薄暗い廊下に高い音が響きわたる。
大野は、完全に怯えていた。
独占欲と支配欲が一気に沸き上がってくる。大野の不安そうな瞳が更にそれを増長させた。
俺が俺じゃないみたい。
リアルな感情が後から後から留まることなく押し寄せてきた。
今なら、言える。
「俺、好きなんだけど」
「え?ッや…!ん…ッんぅ…っぁん…っ…」
無理矢理、大野の唇を奪った。
乱暴に、貪るように激しく求め、角度をつけていく。大野の体は松本を拒みながらも、キスの合間の吐息や声からはだんだんと甘さがでてきた。
そのまま舌を挿れると。
「ッ!…っやめ…ッんぁ……」
あの、シャワールームで聞いたような甘ったるい声が響いた。
自分のキスに大野が反応してる。
その事実が、感じた声が、俺の行為に拍車をかけていく。
単純に嬉しかった。
ただどれだけ弄っても、大野が自分から舌を絡めてくることはない。
もっと。もっと自分だけのものに……
「なにしてんの?」
廊下に、ふと別の男の声が響いた。
………え?
俺は咄嗟に反応できなかった。
いち早く反応したのは、大野だった。
「翔君…ッ!!」
力の抜けた俺を押し退けて、声の主である櫻井の元に駆け寄る。
そして
「ごめん…」
泣きそうな声で謝り、櫻井のほうを見つめる。櫻井がそっと大野の体に触れると、ビクンッと肩が震えた。
それでも櫻井は優しく撫で続ける。
二人の空気は正に恋人だった。
その間、俺は呆然としていた。
夢が醒めていく。
醒めていくはずなのに。
目の前の景色は変わらない。
大野と櫻井が抱き合いながらキスしてる。
そんな姿を見たいわけじゃないのに。
もしかして……現実?
夢じゃ……ないのか?
背筋に冷たい汗が流れた。
俺は、一体何をしてた?
夢なら……醒めてくれ。
何度願っても、俺の願いが叶うことはなかった。
目の前では、櫻井と大野の情事が始まろうとしてるみたいで。俺は逃げるようにして二人に背中を向けた。
歩き出して、だんだんと現実味が帯びてきて。
泣きたくなった。
夢なら素直に言えるのに。
現実で言ったら……絶望だけが色を残してしまった。
好きなのに…。大切なのに…。
ねぇ、切ないよ。
fin...
翔智←潤(・∀・)
潤智(・∀・)?
とにかく松潤悲恋話(・∀・)ソレ!
個人的にシャワールームでのやりとりが上手く書けてたら嬉しいな(-∀-)
翔君はヒーローの如く現れ、ヒロインの智さんを格好よく救っちゃう…(-∀-)
松潤、頑張れ(・∀・)!