
もう何年も前になる。
シンガポール赴任を命じられ 家族より先にシンガポールへ
行くことになった。
小学生5年の息子が 真面目な顔して近づいてきて
「メダカをシンガポールへ連れて行っていいか?」
彼が最近飼いだしたメダカ。とても大事にしていた。
後から思えば 他にメダカを飼っている友達に譲れ と言うべきだった。
が、彼の真顔を見て メダカを連れて行けるか調べる と答えた。
全日空に電話したら、何も事前検査、申請手続きなく 運べるとわかった。
どこか忘れたが 関係省庁にも電話して問題ないと確認した。
出発当日メダカ3匹を入れた瓶を右手でかかえ、左手で大型サムソナイト
を引っ張りながら 成田へ向かった。
![3-5泊]サムソナイト コスモライト スピナー 69 68L V22-306 ...](https://msp.c.yimg.jp/images/v2/FUTi93tXq405grZVGgDqG_pG542kZvBFf8iLYMQSn-SsMkbLxPJ1CnAkzn1BTR3yzhesxgWUGWBy-XBSRx4tTBnU3gwgNCvJyZm5RXXszvLSgPbW0Ki8SFW1UjDcS0CnwTKD2Bvh1DUWRdcfAg8xrMviI_Aq2JEKaeaQdv5YXmiB_0GGXnHU1dgclEeB1knOfLGb-WAst5Hz1zhmlUGE3aSVcjS_S31-lU0PYkWxy8q2u8k2gth6R--oiKB2vke4dWY8sRHGbc75AElDiVj1XG5A57-qLh2AJZdPs-cMTQ4=/08241327_5b7f891734877.jpg)
機内でもメダカ入り瓶を膝に乗せたり、雑誌入れのネットに入れたりして
運んだ。

入国審査で問われることも無し。
が、数日で死んでしまった。シンガポールの水道にはカルキが大量に
含まれているのだ。
ま、当たり前の話だ。
アパート探しどころではない。
死んだ、とは息子に伝えられないから 知り合ったばかりのシンガポール人
数人に メダカを売っている店を尋ね続けたら xxxという通りには
あるという。 (通りの名前を忘れてしまった)
そこには 中国系の方々が愛する巨大な鯉や金魚の店が並んでいて
1匹数百万円だという。

「いや おれが欲しいのは メダカ」と写真を見せたら
”OK OK メダカ ‼ メダカ!!”
と大声出して笑いながら探してくれた。
そのような安い魚を探しに来るような場所じゃないのだろう。
似たような魚を紹介してくれて 買った。
「いいか、水道の水を10日間は太陽に当ててから
使うんだぞ」
店員に教わった通りにして 家族が来るのを待ったが、
結局上手くいかずメダカ第二陣も全滅。
息子には 来てから正直に説明した。

泣かなかった。
父親が じたばたと 飼い続けようとあがいていたのを 見ていたからだろう。
*小さな島国のシンガポールでは飲み水の確保が重大な課題。
高い山もないし 湧き水もない。
日本軍が攻め込んだとき 日本軍は貯水池を最初に占領し
飲み水を得られなくなったイギリス軍はまもなく降参した。
マレーシアから水を買っている。マレーシアと向かい合っている
ジョホールでは 巨大な径のパイプがマレーシアとの間につながって
いるのが見える。全水需要の25%がこれでまかなっている。
購入価格で2国間で揉めることが多いと聞いていた。
ニューウォーターという下水再生水も売っている
屋上のプールが有名なホテル マリーナベイサンズの前に広がる湾も
10年ぐらい前に海とのつながりを切って、巨大な貯水池にしてしまった。
シンガポールは 蛇口から出る水道水をそのまま飲める数少ない国。
飲めるのは 日本、アメリカ、シンガポールぐらい。
ただし 人間は飲めるが メダカは生きられない
