【292】30年ぶりの小浜線 | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

【291】からのつづき


大人の休日倶楽部「北陸フリーきっぷ」の旅2日目は、早暁4時30分に起床して湯に浸かり、サンドイッチの朝食を済ませてから6時にホテルを出る。

朝焼けに染まる雲を背にした敦賀駅を眺めながら、人の少ない駅前通りを歩き、こじんまりした西口駅舎の改札を抜けて小浜線ホームに上がると、6時16分発の東舞鶴行きが2両編成で発車を待っている。
小浜線は、福井県の敦賀と京都府の東舞鶴を結ぶ84.3キロの路線で、全線が単線のいわゆるローカル線。

30年前に京都市内での受験を終えて東舞鶴から乗り通した時はディーゼルカーだったが、2003年に電化されており、今回乗り込んだ125系電車の車内は関西の新快速と同じような転換クロスシートが並んでいる。
列車はワンマン運行で、後ろの車両は有人駅以外はドアが開かず、客は前の車両にのみ10人ほどが乗っている。

後ろ車両の海側シートに腰を下ろし、明るさの増してきた敦賀駅を離れる東舞鶴行きの車内で約30年ぶりの小浜線の旅がスタート。

列車はJR北陸本線から分かれ、東舞鶴を目指して若狭湾に沿うように走るが、しばらくは内陸部を走るので海はまだ見えない。

他に誰もいない後ろ車両でうつらうつらしていると、敦賀から2駅目の粟野から東南アジア系らしき女性が乗ってきて、私の貸切状態は解消。

3駅目の東美浜ではホーム脇の柿の木にたくさんの実が色づいており、秋の旅路を彩ってくれているが、最近増えたクマ出没のニュースを思い出すと呑気に喜んでもいられない。

美浜で件の女性が下車し、三方から野球部らしき数人の高校生と老夫婦が後ろ車両に乗り込んできて、小浜でそれらの人々が降りていく。
代わりに20人ほどが乗ってきて、そのうちの中年男性が私の後ろの列で独り言を叫びはじめたので、さりげなく席を移し、発車後に姿を見せた若狭湾を通路越しに眺める。
大人の休日倶楽部向け「北陸フリーきっぷ」有効区間の西端となっていることからも分かるように、小浜駅を起点にした町歩きもフリー区間内の見どころのひとつで、これから向かう丹後半島の天気予報が悪ければ、今回は小浜周辺をゆっくり歩こうと考えていた。

幸い丹後半島の方が晴れる確率が高いとの天気予報だったので、 小浜から先は乗り越し精算で西に進む。

若狭湾を右手に眺め、小浜線でのノンビリした時間に身を委ねる幸せに浸りつつ、件の男性が繰り出す支離滅裂な独りごとに笑いを誘われる。

朝が早かったので半分ウトウトした状態ながら、敦賀からの約2時間を楽しんで東舞鶴に到着。

降り際に件の男性が寄ってきて掌を差し出しながら、「100円だけ面倒みてくれへん?」と言うので、「アカンアカン」と手を仰いで振り切る。

次の列車まで40分以上あるので、小浜からの乗り越し分680円を改札で支払い、駅前通りを歩いてみる。
軍港として賑わってきた舞鶴の玄関口だけあって、駅前から長いアーケードが海に向かって伸びているが、人の姿はない。
アーケードを抜けた先には歴史を感じさせる映画館が健在で、3Dを表現したらしい龍の看板が人通りのない舞鶴の街を見下ろしている。
交差点の地名標識の大きさや三条の文字から京都府内にいることを何となく思い出すが、人の姿がないので京ことば(このあたりは丹後ことばですかね)を耳にすることもできない。
再びアーケードの下を歩いて駅まで戻ると、京都交通のバスが発車を待っており、側面の行き先に目をやると「中舞鶴」「西舞鶴」の文字がある。
発車時刻が迫っている雰囲気だったので、衝動的に車内に入るとすぐにドアが閉まり、先ほど歩いて往復したアーケード街に沿って進みはじめた。
(つづく)