【291】からのつづき
大人の休日倶楽部「北陸フリーきっぷ」の旅2日目は、早暁4時30分に起床して湯に浸かり、サンドイッチの朝食を済ませてから6時にホテルを出る。
朝焼けに染まる雲を背にした敦賀駅を眺めながら、人の少ない駅前通りを歩き、こじんまりした西口駅舎の改札を抜けて小浜線ホームに上がると、6時16分発の東舞鶴行きが2両編成で発車を待っている。

小浜線は、福井県の敦賀と京都府の東舞鶴を結ぶ84.3キロの路線で、全線が単線のいわゆるローカル線。
30年前に京都市内での受験を終えて東舞鶴から乗り通した時はディーゼルカーだったが、2003年に電化されており、今回乗り込んだ125系電車の車内は関西の新快速と同じような転換クロスシートが並んでいる。

列車はワンマン運行で、後ろの車両は有人駅以外はドアが開かず、客は前の車両にのみ10人ほどが乗っている。
後ろ車両の海側シートに腰を下ろし、明るさの増してきた敦賀駅を離れる東舞鶴行きの車内で約30年ぶりの小浜線の旅がスタート。
列車はJR北陸本線から分かれ、東舞鶴を目指して若狭湾に沿うように走るが、しばらくは内陸部を走るので海はまだ見えない。
他に誰もいない後ろ車両でうつらうつらしていると、敦賀から2駅目の粟野から東南アジア系らしき女性が乗ってきて、私の貸切状態は解消。
3駅目の東美浜ではホーム脇の柿の木にたくさんの実が色づいており、秋の旅路を彩ってくれているが、最近増えたクマ出没のニュースを思い出すと呑気に喜んでもいられない。
幸い丹後半島の方が晴れる確率が高いとの天気予報だったので、 小浜から先は乗り越し精算で西に進む。
若狭湾を右手に眺め、小浜線でのノンビリした時間に身を委ねる幸せに浸りつつ、件の男性が繰り出す支離滅裂な独りごとに笑いを誘われる。
朝が早かったので半分ウトウトした状態ながら、敦賀からの約2時間を楽しんで東舞鶴に到着。
降り際に件の男性が寄ってきて掌を差し出しながら、「100円だけ面倒みてくれへん?」と言うので、「アカンアカン」と手を仰いで振り切る。
次の列車まで40分以上あるので、小浜からの乗り越し分680円を改札で支払い、駅前通りを歩いてみる。

(つづく)





