【270】からのつづき
広電廿日市に戻ると、すぐに広電宮島口行きがやってきたので乗り込み、3950形のロングシートに腰を下ろしてひと息ついていると、雨は上がり雲間から日が射している。
電車は走っては停まりを繰り返して客を入れ替えながら西に進み、地御前(じごぜん)を過ぎると進行方向左側に広島湾が現れる。
少し海を眺めようと阿品東で下車し、ホームを出て線路と並走する道を渡ると、水辺に降りる階段に散歩途中らしい初老の男性が座っていたので、浜に足を踏み入れて問題ないかと尋ねると、潮がひいたばかりだから気をつけて歩いた方がいいとアドバイスを下さる。
目の前には牡蠣の種付け場があり、その向こうには江田島が見えている。
江田島は海軍兵学校があった島で「同期の桜」という日本酒を醸す蔵もあって、行ってみたい場所のひとつ。
夕暮れ時の広島湾を眺めながら初老男性が話してくれる江田島や宮島の話を聞いていると心が癒やされ、この旅での忘れられない時間になった。
(つづく)