松葉浴場 | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

(前ページからのつづき)

丸子温泉に入った翌日、スタンプラリーの銭湯欄ビンゴを成立させるべく小田急線百合ヶ丘駅に降り立った。


この駅で下車するのは約4年半ぶり。前回は経堂で執り行われた葬儀で先輩を送ったあと、多摩センター経由で帰ろうと乗り込んだ小田急線の車内で喪失感に胸が詰まり電車を降りたのが、夜の百合ヶ丘だった。


気持ちが落ち着くまで駅周辺をさまよい歩いたことだけは記憶にあるものの、街の雰囲気までは思い出すことができない。


その後、コロナが始まって先輩を偲ぶ集まりを開くことができなかったが、今年の10月に有志で墓参りをして八王子の酒を片手に思い出を語り合うことができた。


前回から4年半分老いた感覚を足元にわずかに覚えながら、多摩丘陵の起伏に敷かれたバス通りをゆっくりと10分ほど南下し、公園の角を左に折れて住宅地に入ると目的の松葉浴場が見えてきた。

何故ここを銭湯欄ビンゴの仕上げに選んだかというと、1列ビンゴ達成記念のハンドタオルの受け取りができる銭湯が2カ所に限られており、家から近い方を目指したという実利的な理由から。

フロントの女性にスタンプとハンドタオルをいただき、服を脱いで体を流してから湯舟に浸かる。アルプスのような山々の手前をロープウェイが横切る風景を描いた年季の入ったタイル絵を眺めながら体をほぐすと、多摩丘陵にいるのを忘れる。

露天風呂もあるようなので、外に出る扉のノブに手をかけると、「燃料費高騰につき閉鎖中」との張り紙があり、仕方なく回れ右をしてリラックスバスに体を預けて、天井を見あげる。

天井には出窓のような空間にアルミサッシの窓が開いており、浴室の湯気を逃がしている。あの高い位置のサッシをどうやって開け閉めするのかと悩みかけて、先ほど目にした「屋上工事が始まります」の張り紙を思い出して答えがすぐ出た。

30分ほどで浴室から出て、ドライヤーで髪を乾かしてから松葉浴場を後にする。

来る時は土地勘がなくても分かりやすいバス通りをアップダウンしたので、帰りは駅の方角が感覚的に分かっていることから、平坦な住宅街を進んでみる。

多摩丘陵の斜面を切り通してできた道路の両側にゆったりした家々が並んでいるが、セットバック部分に建てられた家には階段でのアプローチが必要で日々の出入りが大変そう。

5分ほど邸宅を眺めながら歩き、このあたりだと思った交差点から左斜めに伸びる坂道を上がると、予想通り百合ヶ丘駅の近くに出る。

駅舎も見えているが、ひと駅歩こうと思い、線路沿いを新宿方面に踏み出すと、最初の踏切に「この先行き止まり」の看板が出ているので線路を渡り、小田急線を右手に見ながら神奈川県道3号を進む。
松葉浴場から25分ほどで読売ランド前駅に到着。
全国にあまたある「~前」駅の中で「~」までの距離が遠いことで、その方面の愛好者に知られる読売ランド前駅の改札を通るのは、小学生の頃に挑んだ小田急全駅スタンプラリーの時以来だろうか。

ホームのベンチに座りながら、スタンプ収集癖はあの頃からなんだなぁ、と成長のみられない自分に同情していると、脇の自動販売機からペットボトルを取り出す男性の顔に見覚えがある。

同業者のNさんで、9月にお会いして以来。声をかけたものか迷ったが、年長のNさんに敬意を表してご挨拶すると、「何でこんなとこにいるの?」と尋ねられるので、スタンプを捺したリーフレットを示して百合ヶ丘の銭湯に入ったことを伝えると、「なかなかのヘンタイですね」と私にとっては最上級の褒め言葉をいただく。

一緒に電車に乗り込み「これからどちらへ」と尋ねると、「府中で呑み会なんだよ」とのこと。自分もこれから府中の磯吉で湯上がりの一杯をやろうと思っていたので驚いたが、それは口に出さずに登戸で降りるNさんを見送り、豪徳寺で東急世田谷線に乗り換えて下高井戸から府中を目指した。
(おわり)