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馬食文化の長野県の中でもよく馬を喰うとされる飯田での昼メシは、やっぱり馬肉。
店の目星はつけてあり、人通りの少ない駅前通りを7~8分ほど歩くと、左手に昭和な感じの看板が見えてきた。

友人のアメブロで知り、訪れたいと思っていた「信濃屋」さん。表の「お食じ」の表記も泣かせるが、2階に上がる階段の踊り場に掲げられた電光看板の「お味の大殿堂」の字体も時代を感じさせる。

2階は食事、3階は焼き肉ということなので、2階に上がり窓際の席に腰を降ろす。13時なので、食べ終わった食器の置いてあるテーブルが多いが、食事中の方も15人ぐらいいて、すぐ隣のテーブルではシニアの男性ふたりが肉鍋をつついている。
とりあえず小さい生ビールと馬刺し定食を注文。こう見えて、昼前には酒を吞まないので、こちらで今日のアルコール解禁とする。
程なく馬刺し定食が到着。

大人になるまで馬肉は苦手だったが、信州で2年を過ごした際に馬刺しで一杯、を覚え長野や山梨、熊本の酒には欠かせない肴になった。
馬刺しをおかずに飯を食べた試しはなかったが、件のブログの写真を見てから馬肉で白飯をかきこむ様を思い浮かべては、よだれを流していた。
まずは豆腐の味噌汁を啜ってから、付け合わせのキュウリなぞサクサクやって焦らしつつ、生ビールで口を潤してから、いざ馬刺し。
と、含んだひと口目は軽くルイベ感あったので、いったん箸休めに野沢菜ポリポリ、奴をモソモソやりながら、再び味噌汁からのトマト&生ビールという解凍タイムを置いて、二切れ目の馬刺しに箸を伸ばすと、トロリと程よいとろけ具合。店内は、石油ストーブが焚かれており、馬刺しを溶かすには、程よい温もり。
こりゃたまらんと、熱燗を注文。ついでに馬の腸を煮込んだ「おたぐり」もお願いする。出てきた酒は、先ほど酒蔵見学を見送った喜久水(きくすい)の一合瓶。

きくすい、というと、新潟の菊水の名が知れているが、喜久水という銘柄が長野と秋田にあり、さらに静岡には喜久酔(きくよい)もあるから紛らわしい。
馬刺しとおたぐりで飾らない田舎の酒の熱燗をやっていると心がほぐれて、馬車でゆっくり伊那の山道を辿っているような気持ちになってきた。