滋賀にて一杯 | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

過日、滋賀は大津にて一杯。

訪ねたのは、京阪石山坂本線で浜大津から石山方面にひと駅行った島ノ関駅が最寄りの日本料理店「おゝ杉」。昨年5月に初訪問して、魚のおいしさと滋賀の地酒メニューの充実ぶりに目を見張り、また訪れたいと思っていた。

予約した時間に店の戸をひくと、すでに座敷から楽しそうな声が聞こえ、板場では大将と女将さん、息子さんらしき若い板前が忙しそうに注文をさばいている。
案内されたカウンター席に座り、約半年ぶりに大将のお顔を拝すると、おゝ杉に再訪できた喜びがこみ上げる。

寒風吹きすさぶ1月の滋賀県内をうろうろしていたので、体が芯まで冷えており、はやく熱燗で温まりたい。
数ある滋賀の地酒の中から「多賀」のしぼりたて原酒を注文。
実は先ほど、多賀大社をお参りしようと、近江鉄道で最寄り駅まで訪れたが、積雪と強風であきらめ、すぐに電車で折り返した。

多賀地域は滋賀県有数のそばの里。参道にもそば屋があるようなので、地酒でそば前でもやるべぇ、と考えていたが、風邪をひきそうなので、白く化粧を施した駅前の赤ポストに向かって「お元気で」と心につぶやき、底冷えのする2両編成の古びた電車に乗り込んだのだった。

そんなこともあって、最初の一杯を「多賀」にしたのだが、かけつけの一杯目に原酒はきつく、純米でないせいもあってかアルコール匂が強く感じられたが、それも最初だけで、飲み進むうちに柔らかく感じられるようになってきた。

お通しは、滋賀の地酒の酒粕をブレンドして作った粕汁。小さく丁寧に切られた根菜をはじめとする沢山の具だけでなく、エビのような魚介の風味も豊かで、それらを酒粕が優しく包み込み、椀の中の奥深い世界に体がゆっくり温まる。

そういえば多賀大社からの帰りの電車は、踏切の度に障害検知器が作動し、現場で停車。発車すると今度はパンタグラフからスパークが爆ぜ、その都度車内灯が消えるような有り様で、車内は冷蔵庫の中のように寒く足下から冷気が上がってきた。そして乗り継ぎの高宮駅は吹雪の中。


愛知から近江鉄道の写真を撮りに来たというカメラ少年とマニア話を交わしながら、古めかしい待合室で遅れている近江八幡行きを待っている時には、おゝ杉が遥か遠くに感じられたものだ。

それだけに、熱燗と粕汁の温もりは天国のよう。
刺身盛り合わせは、ブリ、ヒラメ、エンガワ、金目鯛、アオリイカ、サワラ昆布〆など9種類が小さいながらもふた切れ見当で盛り込まれ、いずれも上質。これで1500円は手を合わせたくなるありがたさ。

2杯目は、甲賀の「初桜」本醸造を熱燗で。温かい食べ物も欲しいので、ウナギの柳川風も注文。こちらのお店は、ウナギのしゃぶしゃぶが名物で、前回来た時に大将からお勧めいただいたが、ひとりでしゃぶしゃぶというのもナンだし、旅先で下手に精をつけるとロクなことにならないので、柳川風で少しいただくのがちょうどいい。

熱燗を啜っていると、予約のお客さんが次々に来店し、板場はさらに忙しさを増す。若い板前は、やはり息子さんで、前回見かけた息子さんの弟さんとのこと。お兄さんは、アメリカ留学中とのことで、しっかりした跡取り兄弟がいらっしゃることは心強いことだろう。

ウナギ柳川風は、3~4センチほどの幅に切られた蒲焼き数切れと甘さをたたえたたっぷりのネギがフワフワの卵でとじられ、出汁汁とともにかきこんでから熱燗で流すと、体が芯からホカホカ。

最後に「竹生嶋」の本醸造熱燗と、ベーコン入りサラダを頼み、1日を回想してボンヤリ。
多賀大社を目指した近江鉄道には約10年ぶりに乗った。前回は、JR能登川駅からバスで八日市へ抜け、そこから近江鉄道で貴生川まで乗車。そして、今回は米原~高宮~多賀大社~高宮~八日市~近江八幡と辿ったので、約10年をかけて全線を乗り通したことになる。前回は確か6月の乗車で冷房が心地良かったが、今回は真冬の乗車でコートを着ていても車内は寒かった。それでも、車内からの雪景色は6年前に訪れた冬の富山地方鉄道を思い出させ、印象に残った。

竹生嶋本醸造を近江鉄道完乗の祝杯にしてサラダをつまみ、デザートのアイスをいただくと、心も体も満たされた。「バタバタしてて、すみませんでした」と、恐縮しながら雪のちらつく店先まで見送って下さった大将に、また来ます、と返事をし琵琶湖のほとりのホテルまでブラブラと歩いて帰った。