岡崎で一杯 | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

過日、愛知県岡崎市で一杯。

岡崎は、何度も通過していながら降りたことがなく、1度訪れたいと思っていた。

岡崎まではお決まりの名鉄パノラマスーパーで。

たまたま来たのは、車内外とも装いを一新したリニューアル編成で、運転士さんも車掌さんも女性。吊り掛けモーターのセミパノラマカーが走っていた時代の名鉄を楽しんでいた者からすると隔世の感だが、ステンレスカーが増えつつある一般車や、特徴のない最近の特急車両に混じって、昭和生まれのパノラマスーパーがこの先しばらく第一線を走り続けるためにリニューアルを受けたことは喜ばしい。

名古屋から約30分走り、矢作川をゴーーッと渡り、その支流の乙川をコーとまたぐと、岡崎市の中心に近い東岡崎(地元ではヒガオカと呼ぶらしい)に到着。

東岡崎駅にはホームのすぐ横に「岡ビル百貨店」という、時代を感じさせる駅ビルがあり、いつも列車で通る度、気になっていた。
改札を出て、まずは岡ビル探索。
改札は半地下のような1段下がったところにあり、そこから地平の高さに上がった1階にはファストフード店など、どこにでもありそうな店舗が入っている。
2~3階は地元の商店が入っているようなので、いざ2階へ。



2階へのエントランスも何か昭和感あって泣かせるなぁ。
2階には、宝石店や書店、美容室が入っており、客の姿もチラホラ。
3階に入っている唯一の店舗である洋食屋さんもまた昭和感ムンムンで、中からはオバサン達の賑やかな三河弁が聞こえてくる。
時間が許せば入ってみたいが、今回は諦めて次の目的地を目指す。

駅に隣接したバスターミナルから名鉄バス安城駅行きに乗ると、駅前から北へ上がり明代橋で市内を東西に流れる乙川を渡って、国道1号を横切ってから伝馬(てんま)交差点を左に曲がると、旧道と思しき商店の並ぶ通りを進む。どこか私の地元、八王子市内の甲州街道を思い出させるが、こちらも八王子同様にシャッターの降りた店舗が目立つ。
7~8分ほどで、岡崎公園に到着。

岡崎が大河ドラマ「真田丸」でも重要な役どころを担った徳川家康生誕の地であるせいか、岡崎公園内にある岡崎城や龍城神社にも観光バスから降りてきた一団がいる。それらのグループをかわしながら神社にお参りをして、城に登る。


天守から岡崎の街を眺めてから、慌ただしく城を後にして、次の目的地に向けて、スマホの地図を頼りに早足で歩く。
国道1号を横切り、城から10分ほど歩いた住宅街の中に、私が岡崎で最も訪れたかった場所はあった。



大正13年に建てられた木造銭湯「龍城温泉」。
全国的にみても、最古参級の銭湯で、東京や大阪からも愛好者が訪れているようだ。
中に入ると、ロッカーの扉に描かれた広告がまた泣かせる。

(写真は、脱衣場に他のお客さんがいないタイミングで、番台の女将さんの許可をいただいて撮影)

浴室には2種類の湯船があり、交互に浸かっていると、地元の方が入って来られたので、昔の岡崎のお話などを伺う。
昔は艶っぽいエリアなどもあったそうだが、「もう変わってまったで」と少し寂しそう。

さっぱりして龍城温泉を後にして、名鉄の岡崎公園駅へ。ここは、普通列車しか停まらない小さな駅だが、以前からホームのベンチに佇んでみたいと思っていた。名鉄には、そうした気持ちにさせられる小駅がいくつかあり、岡崎公園もそのひとつだった。
ホームに上がり、ベンチに座って湯上がりの体を冷ましていると、ゴーッという列車が鉄橋を渡る音がして、数秒後に目の前を特急が駆け抜けていく。何でもない時間だが、風呂上がりに小さな駅のベンチで列車を待っていると、その土地に体が溶け込んでいくような感覚がある。東笠松なんかもそうだが、大きな川のほとりの小さな駅には、桜の頃に佇むと一層味わいが深まりそうだ。

2本の通過列車の後にやってきた普通に乗り、再び東岡崎で下車。
カバンとコートをコインロッカーに預けて、岡崎最後の目的地「つか本」へ。

こちらは、岡崎の中でも古くからやっていらっしゃる居酒屋さんらしく、先ほど銭湯で話をうかがった旦那さんも太鼓判を押していた。



開店直後に入店してカウンター席の端に腰掛けて、まずは瓶ビール(キリン)大瓶とドテ焼きを注文。喉を鳴らしてキリンをあおり、ドテ焼きを頬張ると、もう気分は愛知人(そんな言い方があるのかは知りませんが)。

ビールで腹が冷えたので、地酒「孝の司(こうのつかさ)」を熱燗で。
これに合わせるべく、アイナメ刺身とピーマン焼き。
そうこうしている間に、店内は満席になり、正調三河弁が飛び交う。

板場では、先ほどから何かと気を遣って下さっている女将さんが他のお客さんとも会話を交わしながら、次々注文の入る料理をこなしており、旦那さんは息子さんくらいの若い方とともに刺身を捌く。

ひと通り料理が出ると、客とお店の方の楽しいお話が始まって、皆さん私にも話かけて下さる。居酒屋で話かけられるのはあまり得意ではないが、ここでのお話は面白く、先ほどの銭湯での女将さんや常連さんとの会話を含め岡崎の方は人懐っこいとの印象を抱いた。そういえば、私の知り合いの岡崎出身の方もコミュニケーションスキルが高く、みんなから慕われている。

そんな会話の中で、龍城温泉に入った話をすると、皆さんご存知ないとのこと。銭湯好きには文化財級でも、地元の方には無縁、というようなパターンはよくあることとは言え、惜しい気もする。

アイナメ刺身は、大変新鮮で身の弾力がありながら、舌に吸い着くねっとり感もあって最高。
これに負けぬようにと、孝の司本醸造の原酒をツイッー、っと。
孝の司は東京では見かけることがないが、十分にうまい。

聞けば板場の若い方は、大将と女将さんの息子さんで、最近修業を終えて帰ってきたとのこと。
店の素敵な雰囲気は、跡継ぎ(4代目だったかな)とともに、店に立つことのできたご夫婦の喜びも存分に含まれているからなのだろう。 

岡崎で城、風呂、酒を幸せに楽しむことができました。