夕方に霞が関で仕事を終えるが、今回の仕事は手間の割に手応えが薄く、若干の空振り感。いつもなら、「まあ、そんなこともあるさ」と流すが、今回は軽い失意を覚え「俺にはこの仕事が向いてないんじゃないだろうか」なんて、マトモな人間が抱きそうな考えにとらわれる。
まあ、「俺にはこの仕事が天職だ」なんて思える人はわずかだろうし、天職の中にも空振りや失敗は付き物だろうから、俺の失意なんて下らないものなのだろう。そもそも、失意を抱くほどの大した仕事でもない。
そんなことを考えながら、国会前庭園でひと息つくが、まだ心の蟠りが晴れないから、このまま家に帰るのは家庭平和のためにもよくない。
そんな時は、あてもなくしばらく歩く。
ギンナンとイチョウ葉を踏みしめながら国会の周りを半周して、議員会館の脇の坂を下り、山王日枝神社の坂を上がる。「草枕」ではないが、坂道を登っていると、思考が刺激されつつ整えられる感覚があるから、今日などはちょうどいいコースだったかも知れない。
神社の周りを半周すると、そこは赤坂。
グレーがかった霞が関とは違い、街に彩りがあり、夕暮れの赤坂にはこれから「夜の部」が始まるという活気が感じられる。
適度に歩いて蟠りも軽くなると、あとは一杯やって、残りの澱を流したい。
そこで、「まるしげ夢葉家」に入り、まずは「七本槍 純米生原酒絞りたて中どり」を冷やでキュー。うまい酒に心の澱が流れ去る(我ながら単純な奴だなぁ)。
先ほど、夕飯は煮魚というメールが入ったので、長居はしないと決めた上で、まずは刺身盛り合わせを注文。この日は、カツオ、マグロ、しめ鯖、クエ、ウニ。
こちらのお店は、看板に「朝一番 葉山の海の贈り物」とあり、朝に葉山港に揚がった魚が売りだが、関西でよく食べられるクエも葉山に揚がるのかと訊ねると、「これは長崎産を築地から取り寄せました」とのことで納得。
刺身はどれも新鮮でうまく、クエは単品を追加したいほど。
熱燗が欲しくなり、オススメを訊ねると、栃木は真岡の「辻善兵衛」とのこと。
一緒に穴子白焼きを注文し、しばし待つ。
7月に来店したときは、煮穴子の「サッとあぶり」なるものをいただいたが、身が縮み気味で多少残念だった。
今回の白焼きは、ふっくら焼きあがっており、焼き目も塩気も穴子の旨味としっかり相まって絶品。
9月に訪れた真岡鉄道を思い出しながら辻善兵衛の熱燗をいただくと、夕方の空振りも忘れて、気持ち良く家路に就くことができた。
(写真は浜松町駅の小便小僧。ただいま、期間限定でウルトラの父にコスプレ中。赤坂とも本文とも関係ありませんが、諸々水に流すということで…)
