お風呂と酒と路線バス(77) | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

過日、甲府で一杯。

朝に高尾で友人と待ち合わせて中央本線の下り普通電車に乗り込む。車両は、年内に姿を消すと言われている青い115系。


このカラーは、横須賀線で最初に採用されたことから「スカ色」と呼ばれ、この色を纏って山あいを走ることから、中央本線のこの車両は鉄道ファンの間では「山スカ」の愛称で親しまれてきた。
その山スカも1本を残すのみとなり、ファンの熱い視線を受けながら最後の活躍を続けている。

今回一緒に乗り込んだのは、そんな山スカでの旅をもっとも多く共にしてきた地元八王子の幼なじみ。そんな彼とボックスシートに向かいあって座ると、列車は高尾を発車し、すぐに小仏峠越えの登り勾配に挑んでいく。この中央本線らしい旅立ちの雰囲気は私が愛してやまない汽車旅の風景だが、山スカで味わうのはこれが最後になりそうだ。そんな最後を彼と味わうことができたのは何とも嬉しい。もっとも、彼と向かいあって列車の揺れに身を委ねていると、中学生のころと何も変わらず自然な感じで、特に懐かしさもなければ山スカ最後の感慨もない。それぐらい我々にとっては山スカ車内という空間は、なじみのある当たり前のものなのかもしれない。

笹子トンネルを抜け、勝沼ぶどう郷で下車。


山スカを見送り、他の観光客に、混じって改札を抜け、今日の目的地である旧大日影トンネル遊歩道の入り口を目指す。この遊歩道は、かつて中央本線が使用していたトンネルを整備したもので、片道1・3キロと程よい散歩コースになっている。


入り口近くの駐車場にクルマを停めた家族連れに混じってトンネルに入ると、ヒンヤリ涼しい。笹子方面に向かって25パーミルの登り勾配となっており、改めて山スカの舞台だったことを実感するが、歩いて進む分には大してキツくはない。


壁面はレンガ造りの部分がほとんどで、電灯に照らされて味わいを醸すが、ところどころ補修されコンクリート塗りになっている部分もある。
かつて保守作業員が列車接近の際に逃げ込んだ待避スペースには、トンネルに関する説明板や実際に使われていた非常電話に加え、意味不明な?オブジェがところどころに置かれており、リアルなトンネル空間を半端なギャラリーにしてしまっている。

小さかった出口の明かりが大きくなり、トンネルを抜ける。こちら側にも駐車場があり、その先には旧深沢トンネルを活用したワインカーブがある。

ひと息ついて、旧大日影トンネルを今度は下り勾配で抜け勝沼ぶどう郷駅に戻ると、ちょうど小淵沢行きの普通電車が入ってきた。
山スカとは似ても似つかないロングシートのステンレスカーに揺られ甲府到着。

目指す駅前のほうとう屋は、観光客で混み合っており、道路まで人がいる。ほうとう好きの友人が、県立美術館近くにも同じほうとう屋の店舗があるというので、山梨交通バスに乗って向かうことに。やってきたのは、かつて川崎市交通局で活躍していた富士重工ボディのいすゞLV。
15分ほど揺られて県立美術館前で下車。

目指す「小作」美術館前店はバス停の近くにあり、こちらも入店待ちの客がいたが、15分待たずに席に案内された。
「小作」は山梨県内に数店を展開し、ほうとう好きの彼とは何店かに入ったことがある。前回は、甲府駅前の店に入ったが、激しい雷に見舞われ、ビールを牛飲しておさまるのを待った記憶がある。

今回は、穏やかな秋晴れでゆっくり一杯傾けられそうだ。
彼は酒を飲まないので、鴨肉ほうとうを注文。私は、山梨の地酒「笹一」の冷酒と馬刺、鳥もつ煮を頼む。

笹一は、先ほど通ってきた笹子に蔵があり、見学もできる。この酒で、とろりとした馬刺と甘い鳥もつ煮を食べると、「小作」にきた実感が湧き上がる。

結局、私はほうとうを食べずに退店。
ほろ酔いでバイオ燃料の中型バスで甲府駅に戻り、中央本線の下り列車に乗車。小淵沢駅のホームで高原の風を吸い、ホリデー快速で帰路に就いた。