お風呂と酒と路線バス(45) | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

過日(と言っても結構前ですが)、静岡で一杯。

ある休日、カミさんが子供らを連れて実家に帰った(別に夫婦に揉め事があったわけではありません。念のため)ので、これ幸いと前から気になっていたバスに会いに行こうと決めた。

そのバスは、かつて、静岡~御前崎間の特急バスに使用されていたが、今は御前崎周辺のローカル路線で数台が余生を送っているという。
数年前に静岡駅周辺で見かけ、まだ活躍していることに驚き、かつ嬉しく思ったが、その時点で車齢15年を過ぎていたので、余命はわずかだろうと、その時は寂しい思いで見送った。
再会の機会を逸したと思っていた去年の秋、まだ件のバスが現役で活躍しているとの情報を耳にした。

これは行かねば、と思いながら年が明け、新幹線で何度も静岡を通過しながら、なかなか再会の時間が捻出できなかった。
そんな中、今回やっと再会のチャンスを得て、喜び勇んで新幹線で静岡に降り立った。

件のバスは、原発で有名な浜岡の営業所に4~5台と、静岡~御前崎間の特急バスを運行していた古巣の相良の営業所で2台程度が、ささやかな余生を送っているというので、まずは静岡駅前から相良営業所行きの特急バスに乗り込んだ。

この路線は、件のバスがかつて主役を張っていた静岡~御前崎間特急バスの相良営業所~御前崎間が廃止されたもの。乗り込んだバスは、昨年投入された日野セレガの最新型。低排気量7段変速の今どきの貸切バスタイプで、件のバスの後輩でありながら、乗り心地、性能とも先輩をはるかに凌ぐ。

相良営業所で、目星をつけたダイヤに合わせてバス停に行くと、やってきました、お目当ての三菱ふそう「MP618改」。貸切バスの車体と路線バスの下回りを組み合わせ、口の悪いマニアさんたちからは「ゲテモノ」などと呼ばれる変わり種。嬉々として乗り込み、まずは最後部で車内全体を見ながらエンジン音を満喫。他に客が高校生ひとりなのをいいことに座席を移動しながら、最後に前から2列目に陣取り、前方の景色と運転席回りを観察。いやあ、久々にバスマニア的行動をしてしまった。

バスは海沿いを暫く走り、途中から少し山側に入った旧道を走る。古い街並みの狭い道を元特急用の長尺車がゆっくり進む風景は、むしろ外から眺めたり写真を撮ったりしたいところだか、今回はせっかくつかまえたバスなので、降りるわけにはいかない。
途中、同型の僚車とすれ違ったりしながら、夢の1時間が過ぎ、藤枝駅に到着した。

折り返し相良営業所行きになるので、もう1往復してもいいのだが、こういうのは、ほどほどがいい。少し未練を感じながら、また来るぞ、と想いをつないでおくのが好きな人やモノと距離感を保つ秘訣だと思う。

折り返しの発車は待たず、駅の階段を上り、祝杯をあげる酒場へと急ぐ。

やってきた東海道線上りで、静岡の居酒屋「多可能(たかの)」を目指すが、その前にひと風呂浴びようと焼津で下車。駅近くの健康センターで一浴し、再び東海道線に乗車。静岡で降り、5分ほど歩き開店直後の「多可能」に入店。すでに8割ほどの席が埋まり、一人客の私は1席だけ空いていたカウンターに案内される。

風情ある店内を眺めながら、まずは地元の萩錦を常温で。突き出しは、茹でピーナッツ。マグロ中落ちと太刀魚塩焼きを注文し、萩錦をお代わり。両隣の旦那さん方は、常連かと思いきや、お一人は東京、もうお一人は会津からとのこと。各地の飲んべえを呼び寄せるのは、多可能の持つ奥深い魅力のなせる技。ご両人とも各地を飲み歩いているようで、カウンターが全国の酒場の情報交換の場になる。

塩焼きで萩錦を流していると、貝を盛った皿が目に入る。普段は貝をあまり食べないが、東京の旦那さんのおすすめで、3種類を盛り合わせてもらった。それぞれ風味に個性があり、酒が進むが、中でも「ながらみ」は味わい、風味とも私好み。気分が良くなって萩錦を冷酒の吟醸にして、磯の恵みを堪能した。