もう恐らく食べることはないであろう、幻の鍋がある。
7年ほど前に、友人K子と二人でベトナムへ行ったときのこと。
ショッピングしていると、店員さんが感じのいい学生で、
日本語も上手。「夕飯でも一緒に食べに行こうよ」
と誘った。
彼女が仕事あがりの時間まで我々は他の店で
ショッピング、そしてアオザイ作りと、まあ、お決まりコースを
楽しんだ。
と、突如、てんてんを病魔が襲った。
顔は青ざめ、口がきけず・・・店の椅子に腰をかけて
しばらく休んだが、もう限界に。
「トイレはどこですか?」とだけやっと言って、
案内され、そのトイレでしこたま吐いた。
吐いたら幾分すっきりはしたものの、どんよりした気持ちの中、
午前中に約束した例の彼女との夕飯はハズせない!
と、彼女が働いていた店に戻ると、
「彼氏も呼んだ」といって、二台のバイクが。
K子とそれぞれ彼らのバイクの後ろにまたがり、
ホーチミン名物のバイク部隊さながら彼らがいつも
行くという店に到着。
ローカルもローカル。外国人はだれもいない、しかも、建物は
あるけど壁がない、ちゃぶ台を大きくしたようなテーブルに
昔お風呂屋さんにおいてあったような小さな低い椅子が
並んでいる。ただ、店はベトナム人でチョー満員。
お風呂屋さんの椅子に腰をかけると、まず
鍋が出てきた。中をのぞくと・・・・・泥・・・・のように見える。
むむむ・・・・それでなくても調子がよろしくなかったので、
さすがのてんてんも腰が引けた。
そこへ、葉野菜のてんこ盛りが来て、鍋の泥の中に。
かなりヘコんだ。
ところが、この鍋、食べてみると、むちゃくちゃ美味しい!!!
ベトナムで食べたもののなかで間違いなくのNo1だ。
ちょっと待てよ。ガイドブックには、「どこそこのフォーが美味しい」とか、
「ベトナム風お好み焼きならこのお店」とかあったけど、
この泥鍋のことはどこにも書いてなかったぞ!
もう一度食べたい、幻の鍋。
ベトナムに行く機会がある人は、是非。