女性への告白がハートブレイクではなかったことは

少し残念な話でした。

 

「もうそんな年になったのか」というような、少し感慨深いものを

感じたからです。

 

人生初の告白でいきなりフラれたんじゃ、そりゃショック受けただろうと

夫とも話していたくらいでした。

 

「しばらく、そっとしといてやろう」とも言っていたのです。

 

ところがあまりに会社に行けない日が続くので、いくら失恋したからとはいえ

いつまでも休んでいる訳にいかないだろうにと

心配していました。

 

会社で話し合いをすることになり、会社とこちらの都合を合わせて

息子の今後の話をしに行くことになります。

 

息子もこの時は、会社に一緒に行きました。

仕事を続けるか辞めるか判断が決まったのかと思いましたが、

今思えばまだこの時は、何か予定があれば出て行けるくらいだったのかもしれません。

 

会社の応接室で、責任者の方と親子3人で話をします。

 

会社を飛び出したくらいから息子が言っていたのは、「体力的にきつい」

ということでした。

 

具体的にどうきついのかは言いませんでしたが、責任者の方もいろいろ

考えてくださり、出勤日数を1日増やしてその代わり勤務時間を1時間減らすという

提案です。

 

しかし意外だったのは、息子は勤務日数や勤務時間は今まで通りでも構わないといいます。

あくまで仕事の内容的なことだったようです。

 

よくよく話を聞いていると、自分の仕事以外に同僚から「これやっといて。あれやっといてくれる?」

など仕事を任されることがよくあったといいます。

 

一ヶ所で作業する時間内に、すべての作業を終わらせるように

言われていたことがわかりました。

 

息子「新しい担当の人になってから、時間内に作業を終わらせるように言われて

時間内にできないことが多かった」

 

実は息子が働き始めたころに担当していた人が、体調不良でリモートワークになってしまったのです。

代わりに一緒に作業していた同僚で、一番勤務年数が長かった人が指示役になっていたのでした。

 

前任の担当者は、「時間内に終わらなかったら次の作業の時にやればいい」という指示だったそうです。

ところが新しい担当の人は、時間内にすべて終わらせるようにと言っていたので、

息子はそれを実行するために頑張っていたのでした。

 

しかしどうしても時間の掛かる作業もあり、時間内には終わらせられないこともあったようです。

 

そのことで本人は特に担当者に怒られたとは言いませんが、息子的にきついと感じる言い方も

あったのかもしれません。

 

このことは責任者の人も、「必要最小限の作業がその時にできればいい」と言っていたのです。

 

それともう1つ不思議だったことは、冬の寒い時期に息子の両手の指が酷いしもやけに

なっていたことがありました。

 

しかし、一緒に働く人は誰もそうなっていないらしかったのです。

息子に聞いても、「他の人はしもやけにはなっていない」と言っていました。

 

両手の指、それも10本の指全部が酷いしもやけで

まるでグローブみたいになっていたのです。

 

このことは夫も憤慨していました。

夫「他の人が誰もそうなってなくて、〇〇だけあんなしもやけになるなんて絶対おかしい!

仕事をかなり押し付けられてたんじゃないかと思う」と。

 

自分の仕事以外に頼まれた仕事もやるので、かなり便利に使われていたような

気がしています。

 

言われたことは全部やらないといけないと思っていたようで、頼まれた仕事は全部引き受けて

いたようなのです。

 

いつだったか、会社の人に息子の仕事ぶりを聞いたことがあります。

そのとき「よくやってくれていますよ。もう重宝してます」と。

 

私は、この「重宝してる」という表現が気になっていました。

普通「重宝」って電化製品とか何か物に対して、便利なために「重宝している」とは

よくいうと思います。

 

人に対しても言うのものなのだろうかと、少し不思議な気がしていたのです。

 

内気な息子のことです。

自分の仕事が手一杯でも頼まれたら嫌と言えない、それは責任感もあったのでしょうが、

息子の内気な性格が災いしていたと思います。

 

これを、息子がまだ仕事に行っていたときに聞いていれば、

私は「そういう時は、今こっちやってるのですがこれが終わってからでも良いですか?と

か、それ急ぎますか?とか聞いてみればいいんだよ。」と、絶対言っていました。

 

大抵は急ぎじゃないことの方が多いと思うのです。

急ぎの時は「ちょっとこれ急ぐからこっち先にやってくれる?」」とか、言うと思います。

 

どうして仕事に順調に行っていた時に、ちゃんと相談してくれなかったのかと

息子に対しても憤りを覚えました。

 

しかし、小さい時から人に対して息子は悪口とか陰口というのを絶対的に言えない性格なのです。

 

小学生の時もクラスの子数人にいじめられていたようなのですが、

このころも、息子は誰にも話しませんでした。

 

あとで分かったことですが、息子の腕やお腹にアザのようなものが出来ていたことがあります。

不審に思った私は息子にどうしたのか聞いても「転んだ」としか言いません。

 

しかし、転んだだけでできるようなアザではなかったのです。

 

私はすぐ担任の先生に報告しました。

息子も交えていろいろ聞いていくと、クラスでいつも3人固まって行動している同級生が

いたのです。

 

最終的にその3人にいじめを受けていたことが分かったのですが、それも

息子はなかなか言いませんでした。

 

そのため当初は担任の先生も、別のクラスの子にもそれとなく息子と一緒に遊んでいるか、

遊んだことがあるか聞いて廻ってくれていたのです。

 

結局その3人であることが分かり、先生から親御さんを通して注意をしてくれました。

後日、その3人から息子に「イジメて悪かった」と謝りに来たと息子が言っていました。

 

私「謝りにきたんだ。〇〇はその時なんて言ったの?」

息子「謝ってもまたすぐイジメるんじゃないの?って言ったんだけど、

いやもうイジメないって言ってくれたよ」

私「そう、良かったね」

息子「うん、だから僕もありがとうって言ったんだ」

 

明るく笑って話す息子。

そんなことを思い出しました。

 

人の悪口や陰口をいうのは良い事ではありませんが、息子のように絶対的に言えない性格なのも

自分が傷ついていくだけなので困ることもありますね。

 

職場でも悪口や陰口を叩かれていたかどうかは、これまた息子が言わなかったのでわかりませんが、

言われたこと全部引き受けてなんでもいうこと聞くので、扱いやすかったのだろうと思います。

 

だから「重宝している」という表現になるのだろうと私は思いました。

 

今でも息子にいうことがあります。

私「これが終わってからでも良いですか?という勇気も持った方がいいよ」

息子「うん」と苦笑い。

 

私「”これやって”と言われて、何でも”はい”と言ってしまうと

頼んだ方も、”あ、やってくれるんだ”と思うから、

いくらでも頼まれちゃうんだよ」

 

とも話しました。

 

会社の人と話し合いをした時、こうした話をして最終的に仕事を続けるかは

また1週間後に話し合いの日を設けて、その時息子の気持ちを話すということに決まったのです。

 

1週間の間、息子と合間に仕事をどうするか話していましたが、

「続ける」と言ったり「辞める」と言ったり、やはり迷っていたように思います。

 

私は、「迷うくらいならもう少し、頑張ってみれば?」と話したのですが、

どうしても会社に行くという決断ができなかったようです。

 

別に仕事を続けろと要求したつもりもないのですが、せっかく1年以上勤めてきて

仕事には慣れているだろうから、今辞めるのはもったいないという気持ちもありました。

 

転職したらまた仕事を1から覚えないといけなくなるし、できれば続けてもらいたかった

という気持ちはあった訳です。

 

そうはいってもこれは息子の問題なので、最終的には息子の判断に任せるつもりでした。

 

ところが1週間後の話し合いの日、とうとう息子は着替えることもせず、

結局、会社に行くことができなかったのです。

 

次回は、話し合いに行けなかった日からの息子の様子を書いていきます。