毎朝、駅までの道を歩くこともとうとう1週間目にはできなくなりました。

 

無理に引っ張って行く訳にもいかず、やはり様子を見ているしか方法がなかったのです。

 

しかし、本人は毎日家でゴロゴロしている訳ではなく、朝のご飯の支度や晩御飯作り、

食べた後の食器洗い、お風呂掃除からゴミ捨てなどは

これまで通り、しっかりやってくれていました。

 

小学生のころからの習慣になっていたのです。

 

私などは、もう長いこと晩御飯を作っていなかったくらいで、

すっかり息子に頼った生活でした。

 

このころは、家事はしっかりやってくれていたのでまだ救われていたところがあります。

家から出ない日が多くなり、事実上この時から「引きこもり」が始まっていました。

 

他にどこか行きたいところがある訳でもないようで、スマホで動画を見るばかりです。

 

夫が休みの日などに、ドライブや映画などに誘ってみてくれていたのですが、

無下に断られてしまいます。

 

もともとインドア派の息子、元気に仕事に行っていた時でも休みの日はほとんど家の中でした。

 

そんなある日、息子の会社の事務の女性から電話があります。

 

この女性は事務とはいえ、息子の仕事の指示役もしてくれていた方です。

この女性から思わぬ話を聞きました。

 

電話をくれた前日、息子と部署は違うのですが毎日顔を合わす女性の話でした。

その女性、仮にA子さんとしますが、A子さんが事務の女性に

こんなことを言ってきたそうです。

 

A子さん「私この前、〇〇くんに告白されました」

事務「告白?」

A子さん「えぇ、なんか仕事中急に話があるからと呼ばれて〇〇くんの傍に

行ったんです。」

事務「好きですって言われたの?」

A子さん「いえ、好きとは言われてませんが、なんかずっと話がしたかったとか、

思いを伝えたかったとか言われて…」

 

ここまで聞いた私は、とても驚きました。

正直、息子にそんな度胸があるとはまったく思ってもみなかったことです。

 

しかし、このA子さんは残念ながら既婚者だったので

A子さん「で、私〇〇くんに”旦那さんがいるのでごめんなさい”と言ったら

”はい、分かりました”と笑って去っていきました(笑)」

 

だそうです。

 

この話を夫に話すと

夫「結婚しているかどうか分からなかったのかなぁ?」

私「そうよね、事務の人の話ではA子さん、20代後半くらいだって」

 

このことはあとで息子に聞いてみました。

私「A子さんが結婚しているかどうか見て分からなかったの?」

息子「いや、結婚はしてるかもとは思ってた」

私「一か八か聞いてみたんだ?」

息子「いや、聞いてない。」

私「え?じゃなんの話したの?」

息子「いやただ、話がしたかっただけで想いを伝えたかっただけ」

私「好きな気持ちだけでも言いたかったってこと?」

息子「いや、違う。好きとかじゃなくて…」

 

かなり時間が掛かったのですが、息子曰くこれは告白でもなんでもないというのです。

A子さんに対して恋愛感情があった訳でもないといいました。

 

早い話がハートブレイクでもなんでもなく

ただコミュニケーションを図っていたらしいのです。

 

これには私は心当たりがありました。

 

実をいうと、息子の内気な性格を心配していた私は

これまでにも常々、「職場の人と少しは雑談したりしてる?」と

聞いていたことがあるのです。

 

しかし、返事はいつも「いや、特に…」でした。

 

仕事の話はするけど、それ以外の話はしたことがないらしかったのです。

 

そのため、今となってはこんなこと言わなければ良かったと後悔しているのですが、

私「長く勤めても職場の人と仕事の話しかしたことないっていうのも、どうかと思うよ。

どこに住んでるのかも、休みの日は何してるのかも聞いたことないんでしょ?」と。

 

息子は、私のこの言葉をだいぶ気にしていたようなのです。

 

A子さんを呼んで話したことも、実はA子さんだけじゃなくいつも顔を合わす職場の人全員に

1人ずつ話し掛けていたと聞きました。

 

申し訳ない気持ちです。

ただの心配性の母親の戯言と、軽く流してくれればいいくらいの気持ちでした。

 

職場の人と雑談もしたことないことを責めたつもりは、毛頭なかったのです。

それを息子はこんなにも気にしていたとは、露ほども知らなかった。

 

あれやこれやいろいろ心配して、余計なことを言ってしまっていたのだなと

後悔しきりです。

 

しかし、これが会社に行けなくなった根源ではないみたいでした。

 

息子は仕事を「続ける」か「辞める」かで、ギリギリまで迷っていたらしいのですが、

理由としてはあくまで「体力的にきつい」と、これだけしか言いません。

 

次回は、息子の仕事を辞める本当の理由を書いていきます。