フロムは、現代社会における消費主義や物質主義が

愛を妨げる要因と考え、愛する技術を身につけることが

社会全体の健康と幸福に繋がると主張しました。

彼は、愛は受動的な感情ではなく、能動的な行為であり、

フロムは愛する能力は個人の成熟度と深く結びついていると考え、

愛を一種の技術として捉えて、

その習得には意識的な努力と自己成長が必要だと考えました。

 

自己成長へ向けて

 健康と幸福な社会に求められるのは、「愛する技術」です。

フロム(1956.The Art of Loving)は次のように述べています。

「愛とは、成熟した人格を必要とする、きわめて高度な技術である、

自分の人格全体を発達させ、それが生産的な方向に向くよう、

全力をあげて努力しないかぎり、人を愛そうとしてもかならず失敗する。」

「たいていの人は愛の問題を、愛する能力の問題としてではなく、

愛されるという問題として捉えている。

つまり、人びとにとって重要なのは、どうすれば愛されるか、

どうすれば愛される人間になれるか、ということなのだ。」

 

愛の問題を、多くの人は「愛される」には

どうすればいいかという問題として考えがちですが、

愛の本質は、「愛される」ことではなく「愛すること」に

よってこそ実現するものであるとフロムは説いています。

 愛されることは、幼少期には自然な形で

受け取ることが出来ますが、「愛する」能力は、生まれ持っておらず、

全力をあげて人格の成長を果たし、自己受容の能力を高め、

「愛=自己統合」の能力を獲得していかなければなりません。

 

フロムは、愛する技術を習得するためには、

以下のような自己訓練と自己発展が必要だと説いています。

 

規律:日常生活における規律と秩序を守ること。

集中:目の前の人や物事に集中する能力。

忍耐:愛を育むには時間がかかることを理解し、焦らないこと。

関心:他者や世界に対する興味と好奇心を持つこと。