顔を上げると
そこには優しい笑顔のナムさんがいて
見ただけで
私はものすごく安心した。
男性客は振り返り
ナムさんに何か言い返していた。
早口で内容は聞き取れなかったけど
ナムさんにとばっちりが行ってしまって
申し訳ない気持ちと
どうしたらいいんだろうと
焦る気持ちが混ざり
落ち着きを失くす自分。
冷や汗をかき始めてモジモジしていると
ナムさんが穏やかな表情で
突然私の方に目を向けて
話しかけてきた。
「The truth is I wanna help you.
But I prioritize safety.
Are there any other staff around here?」
(本当は僕がさくらを助けたいんだけど
ここは安全面を優先するね。
他にスタッフはいる?)
突然の英語にビックリしたけど
日本語以外で
唯一まともに話せる言語だから
落ち着いて彼の言葉を聞いて返答する。
「Yes」
(います)
「I think man is better」
(できれば男の人がいいんだけど)
「There is store manager
in back room maybe」
(たぶん店長が
バックルームにいると思います)
「OK. Can you call him?」
(よし。じゃあ彼を呼んで来れる?)
「Yeah」
(分かりました)
彼にそう指示されて
震える足で一旦バックルームへ向かった。