私は椅子に腰掛けると



体を彼に少しだけ向けて







目線を下げて、口を開く。










「あの……お試しの1回だけのモデルが
なんか上手くいって…
プロデューサーさんに呼ばれて…
コンタクトの会社の社長と会って……
長く契約したいと……。
そしてプロデューサーさんから事務所に
入らないかとお話をいただいて……。
すごく迷いました。
続けるつもりは本当になかったので
事務所に入る気なんて更々なくて……」












「でも………予想外のことが起きて……
図書館に不審者が増えたり
家までストーカーされたりということが
多くなってきたんです……。
怖かったですし、
図書館に迷惑も掛けられないし……
だから私はやむを得ず図書館を辞めて
事務所に入って
守って貰うことにしたんです…」








彼は特に横入りすることもなく


ただじっと黙って
私の話を聞いてくれていた。










「図書館を辞めたから
別に収入を得なければいけなくなり
コンタクトモデルの
長期契約を交わしました。

お喋りも演技も興味なかったですし
このままちょっとだけモデルをやって
とりあえず少しでも収入を得ようと思って…
事務所に入った当時は事務所とも
そんな話をしていたはずだったんですが
そんなことは守られなくて……。

事務所が有名なのもあるし、
マネージャーがやり手だったようで、
色んな仕事のオファーが来ました。
グラビアアイドルや他の広告モデルなど
本当に色々と……」







話ながら振り返ると





本当に状況が

目まぐるしく変わって行ったなと思った。