「まぁ……可愛い子だった。
人気が出そうな感じの正統派の美人。
彼女は俺にもう一度会いませんかって
初めて会った日に
こそっと誘ってきた」
そう言っても
彼女は特に反応せずに
一点を見つめていた。
「でも気づいたら俺は
すぐに断ってた。
ごめん、これっきりにしようって…」
僕は思わず手に力が入る。
イマイチ反応がない彼女に
僕が何を言いたいのか
僕の気持ちがどうにか伝わって欲しくて……。
「美人だし可愛いのかもしれないけど…
俺は全然興味が沸かなくて……。
話も全然頭に入ってこなかった。
彼女のこと……知りたいって思わなくて
また会いたいとも思わなかった。
結局その日に俺は
自分の頭の中には仕事かヌナ……
それしかないってことに
気づかされただけだった……」
「その後も俺の友達は
俺を心配してくれて
やっぱり年上が良いんじゃないかって
年上の女性を紹介してくれたりもしたけど……
俺は仕事が忙しかったし
やっぱり興味なくて……
一度立ち話をしたくらいで終わった」
彼女は相変わらず
表情がない感じだったけど
彼女の手に少し力が入るのを感じた。
僕は離すまいと
彼女の指に僕のを絡める。
「俺は忙しいし………
本当に疲れてるのに…………
でもヌナには連絡したかった……!
他の女はどうでも良いのにさ……。
ニューヨークだから
手を伸ばしても届かないんだけど…
ヌナへの気持ちは…
仕事が忙しくても関係なかった。
ヌナは忙しいだろうし
俺のこと鬱陶しいだろうし……
連絡……結構我慢してたんだけど……
やっぱり気になって無理で
電話しちゃった日……
ヌナはオールしてて………
俺はものすごく心配したし
ものすごくイラついた。
遠いし……
でも俺はこんなに心配してるのに!
どうして無茶して
余計に不安にさせるんだよって……。
ヌナは俺が見てないと……
自分を大切にしてくれないし……
でもそんな無茶するヌナのことを
心配する男は沢山居て……。
俺はヌナのこととなると
ものすごくイライラする…」
僕は
イライラと泣きたい気持ちとが
複雑に絡み合って
話ながら辛くなっていた。