電話を切ると
誰もいないレッスン室のソファへ
身を沈める。
変装なしで僕は彼女と出歩けるか………
堂々と彼女だと紹介出来るか………
パパラッチに追われたら
彼女を守れるか………
まず意思として明確なのは
僕は彼女と
ずっと一緒に居たいと思っていること。
でも僕は立場がある。
ただ
スティーブ社長に言われて
頭で心配していたのは
パパラッチじゃなくて
事務所だった。
スキャンダルの時は事務所に迷惑をかけた。
それに二股疑惑の時に
事務所の一部の人には
元Big Hitのスタッフと付き合っていた
ということはバレている。
でも
あの時は結構大変な時期だったから
○○ヌナ以外にも
他部署で辞めた人は何人かいた。
だから勘づいている人はいるだろうけど
特定はされなかった。
今もものすごい忙しさだから
スタッフはそれどころじゃないし
あれから時間が経ったから
事務所内で詳しく詮索する人はいない
そこが幸いだ。
だから現段階で
彼女自身に
事務所から何か手が伸びることは
まずはないだろう。
僕が恐れていたことはそこだった。