彼女は僕の突然の意味不明な質問に
キョトンとしながら
「あ……ありますけど……」
と答える。
「あれってさ
生地をフライパンに落として
焼けていく内に
すっごい良い匂いするでしょ?」
僕はそう話を続けながら
彼女に股がった。
「なんかものすごい
幸せな匂いだと思うんだよね、あれって。
甘くて暖かい感じで………分かる?」
彼女が僕の問いかけに
答えようとしている間に
僕は彼女へ
少しずつ顔を近づけていった。
その内に
上手い具合に横から
カメラマンが撮ってくれて
撮影は進み始めた。
「あ……分かります。
食べる時よりも…
もしかすると好き…かもしれない…です…」
彼女は相変わらず緊張しているようだけど
僕と他愛もない会話をしているからか
さっきよりも
強ばってはいないようで
僕の思い付きの作戦は
どうやら成功したようだった。