でも彼女は
じゃあ辞めます
と言うことはなかった。
「オッパが私のこと……大切にしてくれて
私をいつも優先してくれてること……
私はすごくありがたく思っています。
勘違いしないで欲しいんですが
決して………オッパとこういうこと………
するのが嫌な訳ではないんです……」
彼女が僕を拒否している訳ではないのは
僕も分かってはいた。
なぜなら
僕が彼女を抱き締めた時
彼女は僕の背中に
そっと手を添えてくれていたから。
「オッパだから……私は大丈夫です。
ただ……少しだけ……
ほんの少しだけ……体が……
あの時のことを覚えているみたいで……」
彼女はきっと
意思と体が
合致しないような所があるんだと思う。
それだけ
彼女の過去のあの事件は
彼女の体に
大きな深い傷を残してしまったんだ。
僕は
彼女を惨く扱い、傷つけた最低な男たちを
心から憎んだ。
「モヨナ。
でも無理はしなくていい。
モヨナが悪いんじゃないから。
俺は本当にそう思ってるから。
モヨナのペースで良い。
無理なら無理で大丈夫だから。
でももう1回だけ……
俺に付き合ってみてくれる…?」
僕が彼女の目を見て
真剣にそう話すと
彼女は
「もちろんです」
そう言って
表情に少しだけ笑みが戻った。
僕はホッとして
彼女の手を取ると
きゅっと握って歩き出した。
彼女は少しビクッとしていたけど
きゅっと握り返してくれたのが分かって
"大丈夫だよ"
という思いを手に込めた。