僕は彼女へとゆっくり歩みを進める。
こんなに間近で彼女を見るのは
いつぶりだろうか。
彼女は本当に美しくなっていた。
僕が焦る程までに………。
僕はそんな彼女に少しイラついた。
どうして僕が側に居ない間に
そんなに綺麗になっているのか。
僕と別れた事が良かったっていうの……?
たぶんどこかそう思って
何かに嫉妬したんじゃないかな………
僕は壁に手をついて
彼女の顔を覗き込んだ。
ふわっと懐かしい
優しい彼女の香りが鼻を掠める。
その瞬間
今まで不安に埋もれ
凍えていた僕の心に突然
安心感という名の
暖かい風が吹き込んで来た気がした。
彼女は僕の圧に思わず俯いたんだろうけど
僕は彼女の顔をよく見たくて
無理矢理上を向かせた。
「なんで目反らすの?」
彼女の存在を感じられて嬉しいはずなのに
僕の複雑な心は
彼女に優しい言葉を掛けられる程の
余裕はなかった。
彼女はビクッとして
怯えているのが分かる。
可哀想だけど
僕はこれまでの伝わらなかった
辛い思いの蓋が開きかけていて
彼女の事を気遣うことは出来なかった。
「………やっぱ無理……」
彼女が小さい声で
そう呟いたのが聞こえた。
僕はその言葉に酷くショックを受ける。
彼女に思いっきり拒絶されたことに
僕の理性は崩壊した。