欲のない彼女は
どこに行くかとかは
全て俺に任せてきたので
適当にチゲのお店に入った。
「何か変わったことはあった?」
久しぶりだし
彼女の近況を聞いてみた。
「変わったこと…………
あ………バイト辞めた」
「マジかよ」
そういえば
最近忙しくて
マッサージ屋にも行けてなかった。
「LINEとかん時言えよ」
「え、別に聞いてもアレかな~と思って…」
なんてつまんないことを言う彼女。
「なんで辞めた?」
「え?
そろそろ卒業後の就職先とか
考えようかなって思って……
時間欲しかった。
あとは………….アレかな……」
アレってなんだろうと考える。
「ナンパの件」
まだ治まってなかったのかと
その後確認しなかったことを
今さら後悔した。
「結局ね、店長、言えなかったの。
昔からのお客さんだったみたいで……」
「だとしてもあれはセクハラだろ。
対処するのが当然…」
「世の中そうストレートにはいかない。
辞めるのに丁度良い時期だったし……いいの」
彼女は俺の言葉を遮って
そう言った。
たぶん俺の言う事は分かってるけど
実際はそうならない事が
本当は悔しかったんだろう。
彼女の苦笑いに
俺は胸が痛んだ。
「ユンギには感謝の言葉しかない。
私が傷つかずに逃げられたのは
ユンギのおかげだよ。
店長に私が言ったって
無駄だったってことでしょ?
それをせずに済んだから
その後も少し続けられたし……
ありがとう…」
彼女を助けられなかった情けない男だと
自分にガッカリしつつ
でも
彼女のありがとうに
少しだけ心が軽くなった。