「じゃあまず店長に
そういうお客さんがいて
ちょっと怖いですってくらいは
言ってもいいんじゃね?」
「…………そうだね……」
彼女は俺の話を聞きながら
テーブルに肘をついて
何か考えを巡らせているようだった。
しばらく彼女のバイトの話を聞いていると
彼女がだいぶ
お酒を飲んでいたことに気がつく。
「ねぇユンギ……」
彼女の赤くなった頬と
その呼び方にドキッとする。
「私さぁ……
ユンギみたいな人初めて………」
「は…?」
彼女がコップを倒しそうな気がして
俺はサッとコップを動かした。
「なんかさぁ……
話し方とかヤンキーみたいでさ。
でもなんか面倒見は良さそうだし?
もしかして……元ヤン?」
彼女は酔ってるのか
急にそんなことを言い出した。
「俺が元ヤン………」
俺は思わず笑った。
「人と関わる事自体
あんま得意じゃねぇのにそりゃないだろ」
俺がクククとツボにハマっていると
「あ……笑うと可愛い…」
彼女がトロンとした目でそう言ってくるから
俺は恥ずかしくなって
「酔っぱらいがうるせぇ……」
と顔を背けた。
すると彼女は
テーブルに突然突っ伏した。
「おい…」
俺が少し焦って声を掛けると
彼女は
「私だって~言いたいことはある……
だけど言えないんだよ~……」
と独り言を呟いて
そのまま寝てしまった。
「マジかよ……」