その日のメニューは韓国料理にした。
作り慣れてはいないけど
久しぶりに
韓国の味が食べたいだろうと思って
休み中に一生懸命調べて
イメトレしていた。
なんとか出来上がった頃
玄関の方から
テヒョンさんの元気の良い
「ただいま~!」
という声が聞こえた。
私はキッチンから慌てて飛び出し
廊下へ出た。
「お、お帰りなさい!
お疲れ様でした」
テヒョンさんを筆頭に
ぞろぞろと中に入ってくる。
その中にグクの姿が見えて
私は思わず顔を反らした。
どうしてこうしてしまうのか
自分でも分からないけど
グクと話すのが何となく怖くて
逃げたい気分だった。
でもとりあえず
彼らがすぐ食べれるように
キッチンに戻って
ごはんの準備を急いだ。
メンバーが
「お腹空いた~」
とダイニングに入ってくると
なんか気まずくて
変に緊張が高まってくる。
私は帰りたくて仕方なくなった。
結局
私はこの何とも言えない感情を
コントロールできなくて
咄嗟の言い訳で
早めに帰ると
サンウさんにLINEで断った。
そして
ナムジュンさんにも断って
今日は脱出することにした。
やっぱり心の準備が出来ていなかった。
ここ最近の自分の変な気持ちのせいで
どう接したら良いのか分からなかった。
「ナムジュンさん……あの…………
すみません。
今日ちょっと用事がありまして……。
片付けは明日の朝にしますので
帰らせていただいても
よろしいでしょうか……?
あの……サンウさんには
言ってありますので……」
「あ、分かりました。
ごはんありがとうございます」
ナムジュンさんは疑いもせず
笑顔でそう返してくれたから
私はひとまずホッとした。
私は皆に会釈をして
エプロンをとってバックを持ち
足早に寮を出た。
私……なにやってんだろ…………
自分のアパートに着くと冷静になって
自分のおかしな行動を悔いた。
その夜
私は布団の中で
自分の気持ちを解いてみた。
私がおかしくなってしまったのは
思い起こせば
グクのあの発言からだ。
グクは日本の女の子が好きで
別に私じゃなくても良いんだろうな
とか。
独り占め出来ない人なのに
彼女になって、私…浮かれてたのかな
とか。
空港のグクの表情だって
私が気を使えなかったのが
原因かもしれない。
仕事で疲れてたのに
色々と私の心配をさせてしまって
疲れさせてたのかも
そう考えたら
寮母として
サポートをする立場のはずなのに
本末転倒になってしまっている気がした。
私はどうしたらいいのか考えた挙げ句
グクと距離を置こうと思った。
グクが私に気を遣わなくて良いように
視界に入らないようにする。
存在感を消して
陰でサポートするようにしようと決めた。