「どうしたの?」
グクが近づいてきたので
ハッ と我に返る。
「あの………
皆さん、私に気を使って
日本語で話してくださって……
でも家でも気を使ったら
疲れちゃうんじゃないかと思って…
だから、私に構わず
韓国語で話してくださいって言いたくて……。
でも……私韓国語………」
「ヌナは優しいね。
最初はヌナも、みんなも
気を使って当たり前でしょ?
それに
仕事の時より全然楽な気遣いだから
心配しなくて大丈夫。
でも一応ヌナのその気持ちは言っとく」
「ありがとう…」
「でも、日本語の練習になるから
良いと思うよ。自然に出来るじゃん?」
「…そう……なのかなぁ……。
でも、私、早く韓国語勉強して
覚えなきゃと思って……」
「えーいいよ覚えなくて」
グクに否定されて
思わず え?と顔を向ける。
「僕とコミュニケーションとれてるし」
「え……でも……
メンバーの皆さんともとれないと……」
「僕が間に入ればいいでしょ?」
「でもそれじゃあグクが大変……」
「そんなことないよ。
それに……
あんまりメンバーと仲良くなられても
困るし………」
一緒に生活……というか関わっていくのに
よそよそしくなんて
反って失礼じゃないのだろうか……
そう考えていると
グクは私の肩に腕をかけて
耳元で囁いてきた。
「浮気防止にもなるし
僕たちだけの
秘密のトークもできるでしょ?」
私は彼の吐息と
言われた事のくすぐったさで
思わず首を傾けた。
「いつのまにか…
ヌナのおかげかな?
僕が一番日本語分かるようになったから
たぶん僕たちの会話
メンバーは分からないこも多いと思う。
僕はホントラッキーだなぁ~」
そう言う彼をチラッと見ようとすると
思ったより近くに彼の顔があって
あまりにもイケメンな顔だけに
私は赤面せずにはいられなかった。
「グ……グク…………
仕事するのでちょっと…………」
恥ずかしくて
そう言って逃げようとしたら
グクに腕を掴まれて
ぎゅーーっと抱き締められてしまった。
濡れている手で彼に触れるわけにもいかず
手が宙に浮いたまま
されるがまま状態になってしまった。
「あ~~元気出るわ。
ヌナ、よろしくね?
でもあんま頑張りすぎないでね」
グクは私から離れると
そう言い残して
キッチンを出ていった。
付き合う前というか
私が普通のファンとして彼を見ていた時
私は彼がとてもシャイで
サラッとしてるのかな…
なんて思っていたけれど
いざ付き合ってみると
結構距離が近かったり
ちょこっと苛めてきたりして
私はすごくドキドキしていた。
ずっと好きだった憧れの人が
近くにいる状況は
この上なく幸せな事だけれど
まだ慣れないせいもあって
ドキドキ疲れも感じる。
私はふぅっ とため息をつくと
片付けを再開した。