食事を終えると

スンギさんは
美味しいと有名なお菓子屋さんに
連れて行ってくれた。








そこで私は
今夜テヒョンくんに
メンバーみんなへの差し入れを
持って行ってもらおうと思い付いて

美味しそうな
チョコレートの詰め合わせを買った。







自分にもちょっとだけ買ったりして…。










その後も可愛い雑貨のお店とか


仕事をしていた頃には
なかなか行けなかったような所に
色々連れて行ってくれて




楽しみ過ぎて
つい時間を忘れてしまっていた。










結局自分が興味津々になってしまったせいで
帰ろうと思っていた時間よりも
遅い時間に帰ることになってしまった。








でもテヒョンくんからは
何も連絡がなかったので

急いで帰る必要はないだろうと




送ってくれると言う
スンギさんのお言葉に甘えることにした。












「この辺は暗くて危ないですから
気をつけなきゃいけませんね」


「私は最近遅くに歩く事もなくなったので
大丈夫ですけどね」


「いやでも気をつけてください。
何かあったら僕にすぐ言ってくださいね」










その頃に丁度アパートに着いた。








「では………。
今日はお時間ありがとうございました。
またどこか出掛けましょう」



「こちらこそ。
色んな所に連れて行ってもらえて
すごく楽しかったです!
帰りお気をつけて」





私はスンギさんが見えなくなるまで
見送った。














さて、と
アパートに入って行くと






いつの日にか感じたことのある
微かな気配があって





怖くなって
私は足早に階段を上った。












「ヌナ。俺だよ」



後ろから声を掛けられて振り返ると
階段下に人影があった。



暗くてよく見えなかったけれど

声からして
テヒョンくんに間違いはなかった。







「あ…………テ…テ…?」


「ん」





彼は階段を上がってきて

立ち止まっている私の元へやって来た。






「行こ」





彼は私の持っていた袋を
私の手ごと掴んで歩き出した。









彼の手は少し冷たかった。









私は流されるままに
部屋へ向かって歩き出す。










鍵を開けて中へ入った所で

私はテヒョンくんに話し掛けた。








「テテ。お昼の時は連絡するって…」







そこまで言った所で突然



後ろから抱き締められた。














玄関先の狭い空間。







沈黙が広がる。








私の心臓の音だけが響き渡りそうだった。