「あともう1つ…」
僕がニコッと笑うと
彼女は一瞬僕を見て
また目を反らした。
「僕の事、さん付けて呼ぶの禁止」
「え…?」
「名前呼びで」
そうお願いをすると
彼女はすぐに
「さすがにそれは…」
と渋った。
「じゃあグクでいいよ」
ARMYはみんな
僕の事をそう呼んでるみたいだし
彼女に呼ばれてみたい気持ちもあった。
「わ…分かりました…」
「あ~言ったばかりなのに破ってる!
じゃあ練習。僕の事呼んでみて」
彼女は自然となる上目遣いで
「グ…グ…………グク…」
小さい声で呼んでくれた。
僕はものすごくきゅんとした。
あぁ…これはヤバイ。可愛すぎる………
僕は
「合格」と言って
彼女をまたぎゅっと抱き締める。
僕は彼女の頭に顎を乗せると
無意識に体重をかけてしまったようで
「グ……グク………く…苦しい………」
と下から微かに聞こえてきて
僕はハッとして彼女を離した。
「ヌナごめん!大丈夫…?」
彼女は見たことないくらいに
ゆでダコのように真っ赤な顔をしていた。
「し……心臓が……持たない…です…
あ!」
「あ~!また敬語!
次使ったら苛めよっかな~」
ついつい僕のイタズラ心が働く。
そんな風に
しばらく甘い時間を過ごした。
彼女と少しだけイチャついただけ。
でも僕には十分なくらい幸せだった。
本当はもっと一緒にいたかったけど
彼女の気遣いをありがたく受け取って
その日は早めに休んだ。
そして幸せな気分で
久しぶりにぐっすり眠る事ができた。