「ヌナ?聞いてる?」







「き、聞いてるよ?
か、からかってるでしょ?」





「からかってるわけないでしょ」













「え、じゃ、じゃあ…いつから…?」



「分かんない。
でも気づいたら俺すごい嫉妬してて…
俺だけのスタッフじゃないから
みんなと話すでしょ?
なんか焦って…」



「…焦る………?」








私はテヒョンくんが握っている手を
なんとなしに見つめた。




彼の手はほんのり暖かかった。





















「でもさ…テヒョンくんは
他にも沢山女性を選べるでしょ?
私じゃダメだと思う。
もっと良い人選ばないと。

私は、こんなに素敵で
キラキラしてるBTSを
近くで見られるだけでホントに幸せ。
それ以上は望んでないよ…」







テヒョンくんは
いつになく真剣な表情で話していたので
たぶん、ふざけて言ってるんじゃない。







だから
私自身今思っている事を
正直に話す事が
彼に対する礼儀だと思った。














「ヌナ…俺は
ヌナが良いからこう言ってるんだよ?

でも…
ヌナが俺を望んでない事は分かった…。
けど、俺はヌナを望んでる。
だからそれを踏まえて考えて欲しいです」














「…何を?」






「今後の事。
仕事をどうするかとか…。
俺は、ヌナと一緒に居たいから…」














私は彼の言葉に
何も返すことができなかった。














「とにかく、想いは伝えましたから!!
これからは…心してください!」







テヒョンくんは よしっ と
私の手を握ったまま立ち上がる。




私もその勢いで立ち上がると







「事情聴衆は終わり!送ってきます」






そう言って、彼は椅子を元に戻した。












送っていくって…











私が送ってもらうなんて
どう考えてもおかしい。










「いや、あのテヒョンくん…
あなた芸能人だってこと忘れてない?」




「あ…忘れてた!
なーんてね。
忘れてないよ。変装すれば大丈夫」




「いや、大丈夫じゃないでしょ…。
目立つよ、テヒョンくんは…」









自覚がないのか

事の重要性が分かっていないのか








彼の考えや物言いは
どこか四次元チックな所があって



彼と付き合うなんて
到底想像もできないことだなぁ…


なんて思った。











「じゃあ今日は…
スタジオの出口までで我慢する」










我慢って… 笑







言っても聞かなかったから




私は大人しく
出口まで送って貰うことにした。