「嬉しいんじゃないの?」
そう半分笑って聞くと
「あんまり…」
と彼は苦い顔をして答えた。
「今はヌナといるし」
そう言われて
私、本当は
邪魔だったんじゃないかなーなんて思って
「気遣わなくていいんだよ?
スタッフなんだし」
とニコっと笑って言った。
するとテヒョンくんは
「俺、そういう気遣いはしてないんで」
と真剣な顔をして言った。
「ヌナ
ここで大丈夫ですか?事情聴衆」
「事情聴衆って…。
私何もしてないよ?」
そう笑うと彼は
「しました」
と言う。
「俺に秘密にしてたでしょ」
テヒョンくんは愛らしい四角い口で
ニーッと笑った。
私も自然と笑みがこぼれる。
「ヌナがスタッフさんと話してたのって
海外活動の事?」
「…そうだよ」
「この前の飲み会の時も話してたよね。
どうすることにしたの?」
テヒョンくんは
近くにあった椅子に座ると
手で
もう1つ椅子を
向かい合わせになるように動かして
座るように指を差してくる。
私は向かい合わせに座る事を躊躇して
「ここでいいよ」
と立ったまま話そうとした。
でもテヒョンくんは引き下がらない。
「座ってください」
こんなイケメンと
面と向かって話すなんて
私には拷問以外の何物でもない。
「は、恥ずかしいからせめて横に…」
私は椅子の向きを横にして座った。
でもテヒョンくんは
自分の椅子を横にしてくれなくて…
私の横顔をガン見するような
奇妙な状況になってしまった。
「ねぇ…これ…おかしいよね…?」
私は気づいてくれと言わんばかりに
そう言ってみたけど…
「だからこっちに向けてくださいよ」
と返されてしまい…
一体何の茶番なんだろう…
そう思って
仕方なく椅子を彼の方に向けた。