「いいよぉ…
事務室だから大丈夫」
私はテヒョンくんに
ストールを返す。
彼はそれを受け取って
私の首に掛けてくる。
「女性は体を冷やしちゃダメですよ」
そう言ってニコっと笑ってくる。
私は女性らしいタイプではないから
今までそんな事言われた事もない。
急に女性扱いされて
それにドキっとしている自分が
正直気持ち悪いと思った。
自分の気に惑わされている内に
「じゃ、撮影行ってくるんで!」
とテヒョンくんは
小走りで行ってしまう。
「あ…」
何も言葉を掛けられず
行ってしまった彼の後ろ姿を
私はただ呆然と見つめるしかなかった。
事務室は思ったより寒くて
節電で暖房もつけられない。
ストールは
そんな状況下では救世主だった。
首を動かす度に微かに
テヒョンくんの香水の匂いがする。
私はすごくドキドキしたまま
仕事をする羽目になった。
午後からは予定通り
テレビ局に行って収録のお手伝い。
意識していないつもりなのに
なんとなくテヒョンくんに
目が行ってしまう。
彼が特別何か思ってではなく
ただ優しさでやってくれていることだって
そう分かっているのに…
なんとなく
気になってしまっている自分。
目を反らさなきゃと
収録の資料をパラパラと見ることで
気をまぎらわした。