第3章:決定打
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計画を立てたのは、金曜の夜のことだった。
週末は配信が長めになることが多い——それを利用する。
彼のクセや口調、そして反応を、意図的に引き出す。
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翌日。
昼休み、私はわざと一ノ瀬の視界に入る位置で友達と話をした。
内容は——もちろん仕込み。
「昨日さ、ゲーム実況見てたらさ、すごく声が落ち着いてて癒やされる人がいて……」
「へぇ、誰?」
「名前は……秘密。でも、もしかしたら身近にいるかもって思っちゃった」
友達は意味がわからない顔をしたが、一ノ瀬はどうだろう。
視線の端でそっと確認すると、彼は手を止め、ほんの一瞬こちらに目をやった。
……その一瞬を、私は見逃さなかった。
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夜。
LunAの配信が始まる。
ゲームの合間、私は再びコメント欄に書き込んだ。
《今日、学校で実況の話したら、隣にいた人がちょっと驚いた顔してた》
送信。
ほんの数秒の沈黙。
それから——
『……そうなんだ。そりゃ、驚くよね』
低く落ち着いた声に、わずかな笑いが混じる。
それは「隠していることを気づかれた時」の笑い方だった。
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さらに、私は決定打を放った。
配信中に、彼がゲームキャラをジャンプさせようとして失敗し、軽く舌打ちをする。
その音——昨日の放課後、一ノ瀬がノートを落とした時に漏らした舌打ちと、全く同じリズムだった。
(……もう、間違いない)
背筋を電流が走るような感覚がした。
まるで物語の登場人物になったみたいに、私の中で現実と非現実が重なっていく。
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でも、そこで「あなたですよね?」なんて言葉は打てなかった。
だって——もし違ったら恥ずかしいし、もし当たっていても、彼が隠している理由を無視してしまう。
スマホの画面に浮かぶLunAの声と、一ノ瀬の姿が重なって消える。
私の胸は確信でいっぱいなのに、指先は震えてコメント欄に何も打てない。
——どうしよう。
この秘密を、どうやって抱えていけばいいんだろう。
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