N社の駐在員の方と、ホテルのレストランで今日の仕事の打ち合わせをしました。
打ち合わせが終わってしばらくして、今日訪問する会社から、迎えの車が来ました。
訪問する会社は、インドネシアの財閥の一つである【サリムグループ】の子会社の【サリム・セレスタ】と言う会社です。
駐在員の方の話によると、
【サリムグループ】と言うのは【スドノ・サリム】と言う華僑の人が、一代で築き上げた財閥です。
傘下に四百五十もの子会社を持ち、従業員数二十八万人という、気が遠くなるような巨大財閥です。(当時の話しです。)
前述したように、今日訪問する【サリム・セレスタ】は、その財閥のグループ会社の一つです。
しかも、恐れ多い事に、今日はサリム・セレスタの御曹司みずから、私達を迎えに来てくれました。
もちろん、運転手付きです。
ホテルの前に、今まで見た事がないような長い車体の車が、私達を待っていました。
見るからに運転しにくそうな車です。
この車が、あの有名なストレッチ・リムジンでしょうか。
黒塗りの車は、顔が写るほど綺麗に拭き上げられています。
ロールスロイスかベンツか、車音痴の私には分かりませんが、きっととんでもない高級車でしょう。
運転手のオジサンがドアを開けてくれました。
オジサンは『慣れない高級車にド胆を抜かれて、オドオドしないでさっさと乗りなさい。』とでも、思っているのでしょう。
私『よーと掃除してあるけん、靴ば脱いで乗らにゃんじゃろか?(よく掃除をしてあるから、靴を脱いで乗らなければならないでしょうか?)』
そう言いながら、少々ビビって車に乗り込みました。
私『こげん胴体の長か車は、運転のしにっかろの。(こんなに車体が長い車は、運転しにくいでしょうね。)』
Rさん『免許は大型免許じゃろか?大型特殊かも知れんの。 (免許は大型免許でしょうか?大型特殊かも知れませんね。)』
私『子会社の社長の御曹司の車が、こげん長か車なら、本社の社長の車は、どげん長か車やかの?(子会社の社長の御曹司の車が、こんなに長い車なら、本社の社長の車は、どんなに長い車でしょうかね?)』
Rさん『絶対40フィートコンテナ車ぐらい、長かばい。(絶対40フィートコンテナ車しらい長いですよ。)』
二人で、こんな馬鹿を言いあっているうちに、車はサリム・セレスタの門の前に着きました。
門には大きな鉄扉が付いていて、その横に守衛室があり、守衛のオジサンが監視をしています。
運転手のオジサンが合図をすると、大きな鉄扉が開きました。
車が門の中に入りました。
車の窓から眺めると、そこは広場になっていて、はるか遠くに建物がみえます。
あれが会社の建物でしょう。
建物までの道の両側は、まるで公園のようです。
花壇には色とりどりの花が咲いてます。
広場一面によく手入れされた芝生が生えています。
大きな樹があちこちに聳えていて、暑い南国の陽を遮るように、涼しそうな日陰を作っています。
車は、その中の道を通り、奥の建物の前で停まりました。
やっと、会社に到達したと言う感じです。
会社と言っても、日本の会社のように四角四面の無機質な建物ではありません。
まるでどこかの美術館のような建物です。
田舎者の私達には、入るのがためらわれるように立派な建物でした。
続く