ふもとには、雲杉坪(ウンサンピン)に昇るためのリフト乗り場があります。
雲杉坪でゆっくり出来るようにと思って、今朝はいつもより早めにホテルを出ました。
しかし、私達が着いた時は、すでにリフト乗り場はたくさんの人であふれ、リフト待ちの長い列が出来ていました。
早速、私達も列の後ろに並びましたが、この場になっても、私は、『リフトに乗るべきか、乗らざるべきか、それが問題だ』と、ハムレットのような心境で迷っていました。
私の地方には『馬鹿と鶏の高上り』と言うことわざがあります。
意味は、文字通り『馬鹿と鶏は高い所が好きだ。』と言う意味です。
このリフト待ちの長い行列を見て、世の中には命知らずの馬鹿者が何と多い事かと、驚いてしまいました。
行列に並ぶ事約一時間。
あれこれ迷っている内に、とうとう私達の順番が近づいて来ました。
その時、いきなり中学生の一団が乱入して来ました。
文字通り【乱入】と言う言葉がピッタリの現れ方でした。
そして、あろうことか、引率の先生と思われるオッチャンが、リフト待ちの行列の最前列に、生徒たちを割り込ませました。
生徒たちも生徒たちで、全く悪びれた様子もなく、並んでいる人達を尻目に、次々にリフトに乗り込んでいます。
並んでいる人達は、あっけにとられて、その様子を見ていました。
私は頭に来てしまいました。
私『コラー。馬鹿たれどんが。こすかこつせんたっちゃ、ごろごろ並ばんか!(これこれお馬鹿さん達よ。ずるい事をしないで、さっさと並びなさい。)』
大きな声で、注意しましたが、先生も生徒も怯んだ様子はありせん。
怯むどころか、私を睨みつけている生徒もいます。
先生らしいオッチャンも平然としたものです。
呆れてしまいました。
当時の中国は、ようやく経済発展が端緒についたばかりで、旅行出来る人たちはそんなに多くはありませんでした。
だから、この一団は、おそらく中国のお金持ちの子供達でしょう。
多分、この子供達は、昆明花博を見たついでに、社会見学を兼ねてここに来たのでしょう。
それは学校行事か、親たちの意向か知りませんが、社会科見学の教育目的は一体なんなのでしょうか?
それに、引率の先生の教育理念とは一体何でしょうか?
この不愉快な光景を見て、私は思いました。
『引率の先生は、自然の美しさや、大人になるためのマナー、旅先での旅情や美しい思い出よりも、中国の社会の生存競争の厳しさと、それに勝ち抜くための生き方を教えているのだろう』と。
そう思うと、周りの景色の美しさとは裏腹に、寒々とした気持ちになりました。
そして、そっと心の中でつぶやきました。
『ご苦労さん・・・。』
私の海外旅行の経験の中で、嫌な思い出は、数えるほどしかありません。
その数少ない経験の中の一つが、この時の出来事です。
続く