ここから先は、ホームステイ後のヌーディーとの思い出を、書いて行きます。
ヌーディーは、今、チェンマイで大学生活を送っています。
私は、暇を見つけては、タイへ行っています。
私が、チェンマイに行った時には、必ずヌーディーが、ホテルに会いに来てくれます。
そして、夕食は必ず一緒に食べる事にしています。
一緒にいる時には、ヌーディーは、いつも、ホームステイで楽しかった事、おかあさんの料理が一番おいしかった事、ブレイキーやテンスケやフータと遊んだ事など、日本の思い出を、懐かしそうに話します。
家に帰ってから、その話をすると、女房もヌーディーに会いたくてたまらなくなるようです。
女房と相談して、二年後に、もう一度ヌーディーを、我が家に呼ぶ事にしました。
ヌーディーは、一度日本でホームステイした経験があるので、今度は、最初の時ほど、面倒な手続きは要りません。
そこで、KNさんにビザの申請と、航空券の手配を頼みました。
今度のホームステイも、最初の時と同じく、学校の休みの期間にしました。
丁度その頃、KNさん夫妻も、日本に帰って来る事になっていたので、一緒にヌーディーを連れて来てもらうように、頼みました。
ヌーディーの二度目のホームステイの準備も、すべて完了しました。
明日チェンマイを出発すると言う日の夕方になって、ヌーディーから、電話がかかってきました。
電話に出ると、『おとうさん、パスポートがなくなりました。』と、全く緊迫感を欠いた、ヌーディーの声が聞こえて来ました。
驚いた私が『よく捜しましたか?どこで無くしたのか、よく思い出しなさい。パスポートがないと、日本へ来られませんよ。』と言っても、
ヌーディーは『よく捜しましたが、どこにもありません。多分、バイクで学校から帰る途中に落としたと思います。』と、これまた、全然屈託のない声で答えます。
電話では、あまり差し迫った様子は感じられません。
最初は、冗談かと思ったくらいです。
『どうしようか。』と、心配している私に、ヌーディーは、さらに追い打ちをかけます。
ヌーディー『でも大丈夫です、おとうさん。私はコピーを持っていますから。』
ヌーディーは、落ち着いた声でそう言いました。
私が『コピーではだめです。』と言っても、
ヌーディーは『飛行場でお願いします。IDカードも持っているので大丈夫です。』と言い張って聞きません。
私は、こんな事態を、全く想定していませんでした。
だから、変更不可のディスカウントチケットを取っていたのです。
この時間では、チェンマイの旅行社の営業時間は、終わっています。
チケットの変更もキャンセルも出来ません。
明日になれば、全額キャンセル料として取られるので、返金もありません。
もったいない話ですが、今回は、ヌーディーに、ホームステイを諦めてもらうより仕方がありません。
後日、KNさんが日本に帰国してから聞いた話ですが、ヌーディーは最後まで納得しなかったそうです。
しかし、自分がパスポートを亡くしたのですから、自業自得と思って、あきらめてもらうより仕方がありません。
こうして、ヌーディーの二回目のホームステイは、幻のホームステイになってしまいました。
翌日、ヌーディーを連れて来てくれるはずだった、KNさん夫妻を、空港まで迎えに行きました。
KNさんに立て替えてもらっていた、ヌーディーのチケット代を支払わねばならなかったし、いろいろ心配をかけて申し訳なかったからです。
ヌーディーのを話しながら、KNさん夫妻を、家まで送る途中、ヌーディーから電話がありました。
電話からは、これまた底抜けに明るい、ヌーディーの声が聞こえて来ました。
ヌーディー『おとうさん、パスポートが出て来ましたよ。』
私『どこにありましたか?』
ヌーディー『コピー屋さんです。パスポートをコピーした時、コピー機には挟んだまま、忘れていました。これで、日本へ行けます。』
『日本へ行けます。』と言っても、もう後の祭りです。
ヌーディーが持っているチケットの、日程変更は出来ないのです。
『パスポートが出て来たから、日本へ行ける。』と言い張るヌーディーを説得するのに、一苦労しました。
それにしても、ヌーディー、あなたはまだ十九才ですよ。
まだ、ボケる年ではありません。
本当に、ヌーディーは、【天然娘】です。
それから、さらに三年後。
再度、ヌーディーを日本に呼んでやりました。
その時は、ヌーディーはチェンマイ大学を卒業して、バンコクの看護学校へ行く前でした。
今度は、ヌーディーはパスポートを無くさず、一人で日本に来ることが出来ました。
もっとも、日本に来る前に、私と女房が、何度もパスポートを確認するように注意しました。
※後日談
幻のホームステイの時は、KNさんにチケットの手配を頼んでいたので、チェンマイの街中の旅行社で、チケットを購入したそうです。
その事を知ったプイさんが、その旅行社と、いろいろ交渉してくれたそうですが、無理だったそうです。
すっかり、プイさんに、迷惑をかけてしまいました。