☆BTE 2021-12-23記
Amapola:

 

この歌は、1920年のスペイン語の歌です。ここでは、その英語詩を翻訳しています。日本でのレコーディングは、淡谷のり子が1937年に出しています。それが、英語のWikipediaにも触れられています。YouTubeでも、その、淡谷のり子の歌(日本語歌詞)が、容易に見つけられます。

 

オペラのホセカレーラスが歌ってくれたりしていて、曲は大したものです。スペイン語の詩は分かりませんが、英語詩も悪くはないです。大体が男の歌のようですが、それに目を付けて、歌った淡谷のり子は偉いものです。しかも、日本の戦争直前の事で、その当時、最後の西欧文化の輝きだったのでしょうか。

 

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Amapola (1920)

Composer:Jose Maria Lacalle Garcia

Lyrics:

(Spanish)Jose Maria Lacalle Garcia

(English)Albert Gamse


「Amapola」英語詩:

曲名:アマポーラ

美艇香津 訳詩

 

Amapola
 アマポーラ
My pretty little poppy
 かわいいポピー
You're like that lovely flower, so sweet and heavenly
 そのはなのように、あまく、せつなくて

 

Since I found you
 あなたをみて、もう
My heart is wrapped around you
 こころははなれない
And loving you it seems to beat a rhapsody
 あいしてる、たまらないきもちはラプソディ

 

Amapola
 アマポーラ
The pretty little poppy
 かわいいポピーが
Must copy its endearing charm from you
 そのいとしいほほみをまねる

 

Amapola, Amapola
 アマポーラ、アマポーラ
How I long to hear you say, "I love you."
 「あいしてる」とあなたからきく、ひはいつ?

 

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さっそく、1行目から、

 

Amapola
 アマポーラ

 

これは、その通りです。

 

My pretty little poppy
 かわいいポピー

 

私の、綺麗な、可愛い、ポピー、です。

 

ちなみに、ポピーとかアマポーラについては、インターネットで見ると、次のような記事が出ています。

 

⇒『「アマポーラ」はスペイン語でヒナゲシの花を意味する。』

⇒『(ポピーは)栽培種としてはヒナゲシやアイスランドポピー P.nudicaule,ケシ,オニゲシなどが含まれる。』

⇒『ヒナゲシは、グビジンソウ(虞美人草)、コクリコ(フランス語: Coquelicot)、シャーレイポピー (英語: Shirley poppy) とも呼ばれる。他のケシ科の植物も含めて単にポピーということもある。フランスやポーランドなどの国花として有名である。』

 

そして、歌の次の行です。

 

You're like that lovely flower, so sweet and heavenly
 そのはなのように、あまく、せつなくて

 

「あなたは、その可愛らしい花の様で、とても甘く、...、です。」

 

まずは、普通に訳せますが、「heavenly」の当たる日本語を見つけるのが一仕事です。たぶん、「天国に咲いている様な」、または、「天にも昇る」、みたいな事でしょうが、難しいですね。「天国」というのが、我々には分からないのです。また、「てんごく」という音も、へたをすると、「かんごく」に近くなり、一大事です。だから、自分で、言葉を探すしかないですね。当翻訳者が見つけたのは、

 

 せつなくて

 

です。いいんじゃないでしょうか。

 

そして、その花の様なあなたを見て、次の連で、思いっ切り歌います。

 

Since I found you
 あなたをみて、もう

 

 Since  ..から(以来)、..の後ずっと

 

歌として、「..していらい」、とかは言えませんね。「..から」はありそうですが、それでは、感動が足りないので、「もう」、にしました。「もう」と言う語は、「..してから、もう..」と使います。その「もう」、です。だから、「..から」と、ほとんど同じ意味です。でも、そこに、叫びがあり、感動があります。

 

My heart is wrapped around you
 こころははなれない

 

 wrapped  包まれた、くるまれた

 

(自動翻訳)⇒私の心はあなたの周りに包まれています

 

自分の心は、あなたを取り巻いて、包まれた(または、包んだ)状態です。

 

私見では、英語が文法的に変なのだと思います。「wrap(包む)」という動詞が受動態で使われていて、それなのに、「around you(あなたの周りに)」と言うと、その主語は能動態的と思われます。ちなみに、「wrap around」で意味を調べると、「巻き付ける」とか、「抱き付く」、です。

 

「私の心が巻き付かれる」だとすると、それは、「あなたに」、直接的に巻き付かれるので、「around」にはならないと思いますが、それも、「wrapped」を形容詞だと思って見れば、そうでもないような、ですね。いずれにしても、その状態は、ほぼ同じ事ですから、「包まれた」に拘らずに、別の言葉を探しました。

 

 はなれない

 

ですね。翻訳というとき、原文が、通常の文法をまったく無視していたりすることもあるので、気を付けると言うか、気を利かせる事も大事ですね。

 

そして、次の行、 この連のまとめです。

 

And loving you it seems to beat a rhapsody
 あいしてる、たまらないきもちはラプソディ

 

 rhapsody  《音楽》ラプソディ、狂詩曲

 beat a rhapsody  (自動翻訳)ラプソディを打ち負かす

 

「ラプソディ」は、分からないでもないですね。なので、そのまま使います。そして、「beat a rhapsody」は、ラプソディの拍子、楽の音が、心臓の鼓動の様に打つ、ドキドキ感ですね。自動翻訳には、この程度で、安心しておきましょう。でも、訳はどうなるのかは、考えないと行けないのです。だから、

 

 たまらないきもちはラプソディ
 

です。「ラプソディのかなでるきもち」などよりは、よいのでは。

 

第2連です。

 

Amapola
 アマポーラ

 

これは、その通りで、

 

The pretty little poppy
 かわいいポピーが

 

前にあった、「My pretty」が、「The pretty」に変わっています。そのポピーが、という事で、文法的にも納得です。そして、ここで、重要なのは、この行が、「..が」と、主語を提示して終わっている事です。原文は、名詞句ですね。それは、次の行に関わる重要なポイントで、ここに、「..が」がないといけないのです。日本語の助詞が分からないと出来ませんね。

 

Must copy its endearing charm from you
 そのいとしいほほみをまねる

 

 copy  コピーする、真似る

 endearing  愛情のこもった、人の心を引き付ける

 charm  魅力

 

この行の主語は、前の行で言われてる、「poppy」です。この歌の眼目ですね。ポピーの花が、あなたの、心を引き付ける魅力を、コピーし、真似していて、それで、ポピーの花が、可愛らしく、綺麗だと言うのです。この着想が面白いですね。「あなたはポピーの花の様に愛らしい」と言うのは、言わば、普通です。「あなたの愛らしさを、ポピーが真似ているので、そのポピーが愛らしいのだ」と言うと、「あなたの愛らしさ」は、ポピーの上を行く、本物だというので、もう、限りがないですね。

 

ここでも、言葉選びが重要です。「endearing」を何と言ったらいいでしょうか?「charm」を?。たとえば、「心を引き付ける魅力」、「こころをひきつけるみりょく」と言ったら、何を言ってるか分からなくなります。「ひきつける」とか「みりょく」の意味の解釈に、頭が論理的に回転し、その情趣を楽しむ暇はありません。なので、

 

 いとしいほほみ

 

です。「魅力」は「微笑み」に置き換えました。同じ、「charm」だからです。

 

そして、叫びます。

 

Amapola, Amapola
 アマポーラ、アマポーラ

 

この通りですね。

 

How I long to hear you say, "I love you."
 「あいしてる」とあなたからきく、ひはいつ?

 

 long to  望み、待ちわびる

 

あなたが、「I love you」と言ってくれるのを、望み、待ちわびるのです。

 

(自動翻訳)⇒あなたが「愛してる」と言うのをどれだけ待ち望んでいますか。

 

この自動翻訳の語尾は、「..いるでしょう」でも、いいですが、それを聴いても、ピンと来ませんね、気持は、文として、分からなくはないですが。その気持ちは、端的に、一遍で分かる言い方でなければなりません。英語では、たぶん、「How I long ...」でよかったのでしょうが。

 

なので、

 

 「あいしてる」とあなたからきく、ひはいつ?

 

「聞く日は何時?」と聴いて、「何月何日」という運びになる人はいません。そう言っている人の、切なく、じれた気持ちがピンと来るのです。

 

 

-完-

 

(余白残興)

 2021.12.23記:

 

1920年、スペインの歌というと、その社会的背景もよくは分かりませんが、第一次世界大戦が終わった後の、ゆるんだ気持ちはあったと思います。1939年にディアナ・ダービンの歌で、大ヒットしたそうです。淡谷のり子の後ですね、そして、もう、日本は戦争で一杯になっていたのです。

 

YouTubeを拾っておきます。この歌は、バースが長かったり、歌に入る前の前奏が長かったり、また、もともと、スペイン語の曲で、歌がスペイン語だったりと、ちょうどよい具合のを見つけるのに、手間がかかります。