第1章 出発
10月2日朝5時、達也は駅のプラットホームで 電車を待っていた。コートを着ていても寒さが身 にしみる。取り分け今日は憂鬱でもあり泣きたい 気持ちだった。教習指導員試験2日目の朝の事で 有る。10月1日の1日目の筆記試験で緊張のあ まり本来の力が出し切れずに終わってしまったの が悔しく又情けない気持ちでいっぱいだった。達 也は、今迄の人生で経験した出来事が、そうまと うのように達也の脳裏を駆け巡った。達也は、3 5歳で教習所の指導員見習いとして東京の教習所 に入社した。入社する前は、大手のタクシー会社 に勤務していて、売上も良い方で、仲の良い同僚 も多く、特に親しかったのが、同僚の大場さんで ある。仕事中でもメールのやり取りをしたり、休 日は居酒屋やカラオケに行ったりして、日頃の憂 さ晴らしをするほど仲良しであった。達也は、妻 と3人の子供に恵まれ幸せな日々を過ごしていた かの様にはたからは見えたが、実際家の中は複雑 な状態で有った。両親と同居していた達也は、家 庭の事で常に悩んでいた。両親と妻との関係が上 手く行かず、両親と妻との板挟みに遭う日々を送 っていた。同僚の大場さんにも相談していた。大 場さんは「達也は考え過ぎなんだよ、俺も今迄妻 とは色々遭ったし、みんな平然としている様に見 えるけど、いろんな問題を抱えながら生きている んだよ。みんな、それを乗り越え又抱えながら成 長していく行くんだから、余り深く考えないでケ セラセラで生きて行けよ」と、励ましてくれた。 確かに大場さんの言う通りで有る。みんな口には 出さないが色々な問題を抱えながら生きている。 達也は頭では理解していたが、生真面目な性格の 達也は、なかなか頭を切り替える事が出来なかっ た。ある日達也は、手のしびれを感じていた.近 くの整形外科に行ったが異常は無く、ただの疲れ かと思い仕事をしていたが、数日後今度は手のし びれに加え下痢が毎日続く様になり今度は内科に 行き診察を受けた。内科の先生は精神的ストレス から来る過敏症で下痢が続いていると言われ、過 敏症に効く薬を貰い飲み始めた。手のしびれは相 変わらず続いていたが、過敏症の薬を飲み始めて 下痢は止まり、達也は安心していたが、薬を飲み 始めて一ヵ月が経過した頃、また下痢が続くよう になり、今回はめまいも感じる時があった。達也 を心配して同僚の大場さんは、大学病院に行き検 査を受けた方が良いと勧められた。達也も日に日 に症状が悪くなっていくので、大学病院に行って みる事にした。病院に行ったら直ぐ検査を受ける 事になり、いろいろな科で検査を受け、後日検査 の結果を聞きに病院に行った。検査の結果は、う つ病と先生に言われ担当の先生から直ぐ入院する 事を勧められた。達也はうつ病と言う病気は知っ ていたが、まさか自分がうつ病になり直ぐ入院と は思いもよらず動揺を抑えきれなかった。一旦自 宅に戻り気持ちを落ち着かせ入院する事を決意し た。これは後から分かった事だが入院する事によ って自宅にいる時のストレスから解放する為の目 的だったらしい。達也は、直ぐ退院出来ると軽く 考えていたが、現実は達也の思いとは裏腹に意外 な展開になる事を達也はまだ知るよしもなかった。
つづく