君の膵臓をたべたい


このタイトルを 初めて書店で見た時
え⁈
と 不気味に思って 通り過ぎた


その後 この本が “書籍ランキング”の上位にあるのをよく見かけるので
書店に行った時 手に取ってみた


裏表紙にある あらすじを読むと 主人公のクラスメイトは 膵臓(すいぞう)の病気らしい
(オカルト的な 怖い物語かと思った)


私の親友、かつてのクラスメイトは 6年前に この世を去った


彼女は膵臓の病気ではなかったけれど 難病で 長患いの末の旅立ちだった


そんな事が 頭をよぎったのと このタイトルの意味を知りたくなって 購入


既に読み終えたけれど もう一度読み返している

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冒頭は その病を患った 女子高校生の 葬儀の日
 
主人公の男子高校生は 葬儀に出席せず 自宅で過ごしている様子から始まる


そして時は 彼女がまだ元気だった 数ヶ月前に遡る


そう!この物語には 大前提として がそこにある


ストーリーの重要な一場面を切り取って 冒頭に持ってくる このような手法は 他の物語にもあるけれど
この小説では そうする事で この大前提を読者に知らせる効果が 充分に発揮されていると私は思う



主な登場人物は
快活で クラスで人気者の桜良(さくら)

彼女とは正反対に 人と関わる事を ひたすら拒み続ける

  僕は自らを 時に*“草舟”と言う
  (*草舟は「自分の意思でなく 他人に流されて行く」 という意味…だと思う)


クラスメイトであっても それまで 全く接点のなかったこの二人は とある病院で偶然出会う


その時彼は それとは知らず 桜良の日記『共病文庫』を読んでしまい
彼女が膵臓の病気で “もうすぐ死んじゃう”事を知ってしまう


それ以降 この秘密を知っているのは 桜良の家族と 彼だけ



この小説の特徴は
主人公の僕の名前が 物語の最後の方になって ようやく出てくるところ


それまでの 名前の表現は
桜良は彼を「君(きみ)」と言うけれど
時には【秘密を知ってるクラスメイト】くん,【地味なクラスメイト】くん,【仲良し】くん

他の登場人物も【大人しい生徒】くん,【根暗そうなクラスメイト】くん,などと
話者の 彼に対する印象によって 括弧付きで書かれている

の母親に至っては あんたと言う


名前が書かれない というのは 彼の印象が薄い 事を表現しているのだろうか…

それとも 実際には名前を呼んでいても 話者の 彼に対する印象や気持ちを 強調するため

又は「『共病文庫』に 僕の名前を出さないで」と 桜良に言ったから
かもしれない



自分には未来が無い事を いつも冗談めかして言う 桜良と

その受け応えに 時にはギャグで返し
時には真剣に言葉を選んで返事をする僕


この二人の会話が 不謹慎ながら とても面白い


人との関わりを拒んできた桜良と半ば無理やり関わる事になって
の考え方が 少しずつ変わっていく様子も とても興味深い


はたから見れば どう見ても二人は付き合っている

けれど 未来の無い二人に それはあり得ないと 心にフタをする気持ちは切ない




桜良が書いた『共病文庫』は 最後に一番大切な人へ渡される


それを読んだ 遺された人たちが 
桜良が去った後の喪失感を どうやって乗り越えて行くのか

桜良は自身の死後の事まで 相手を思いやる気持ちを綴っていて 感慨深いものがあった


『共病文庫』があったからこそ 遺された人たちは 彼女の想いを理解し 深い悲しみや喪失感から 立直る事が出来る



この小説のタイトルは 文中の そこここに出てくるけれど
二人が最後に交わしたメール…

私には このタイトルの意味が 
愛の告白に思える



これまで私は
「人は誰でも 死に向かって生きている」
と思っていたけれど
「死ぬ前に どう生きるのか」が大切なのだと
この小説を読んで 思い知らされた


この一冊との出会いに 感謝

                


同名のコミックも 少しだけ読んでみましたが キャラクターが 高校生にしては幼く見えました

私には ちょっと違うかなぁ…と
あくまで私の主観です


映画化されたようですので 先に映画を観るのも 良いかと思います

原作より もっと先の未来まで描かれています

  Mioでした~~