モンテヴェルティーネ:モンテヴェルティーネ リゼルヴァ 1985 その2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol. 84

Montevertine-Montevertine Riserva 1985 その2

 

前回の続きです。Montevertine Riservaの立ち位置を確認しましょう。

 

Le Pergole TorteがMontevertineのポートフォリオ最上級品であり、Montevertine RiservaがChianti Classicoオリジンである事には、当時も今も間違いありません。

伝説のToscanaヴィンテージ1985では、Le Pergole TorteはDue Bicchieri、但しこのMontevertine Riserva1985がTreBicchieriを受賞するという逆転が起こっています。Sv100に拘り造られたLe Pergole Torte1985の様に、固めの酒質のワインはVini d’Italia1989でジャッジする(1985は1987~1988にリリースされ、ガンベロロッソガイド1989用の一斉試飲は1988の春~夏に行います)には熟成時間が短すぎた。元来が柔らかい酒質のConcertoやFlaccianelloはTreBicchieri受賞、一年遅らせてVini d’Italia1990にエントリーしたSassicaia1985はTreBicchieriを受賞しますが、SolaiaやPercarlo、一連のCapannelleの作品などは受賞を逃します。こうした事実を鑑みると1985は柔らかい酒質の物か、長期熟成でこなれたRiservaタイプの物が中心の受賞していると解ります。

 

1977年にLe Pergole Torte造りを始めたSergioは、それ以前の1971からChiantiも仕込んでいました。白ブドウ品種に関しては栽培するも果たして混醸していたかどうか。組合はその事を黙認していたのか或いは注意勧告していたのか定かではありませんが、1981年のChianti用サンプルを組合に送った時、組合から『もしこのヴィンテージが既に瓶詰してあるとすれば、これらはパーフェクトではない』との返答が届きます。1981はSergioの会心の作、それまでに造った中でベストの出来であると自負していた為、今回の組合からの否定的な回答に激怒し、組合からの即時脱退と今後一切のChiantiを造らずに全てVdTでMontevertine (Riserva)として出荷すると誓います。

 

では、何故Sergioは晩熟で固い酒質のSv100に拘りLe Pergole Torteを造ったのでしょう。究極のChiantiを造る為?いえ、実はSergioにとってLe Pergole Torteは『Brunelloを名乗らないBrunello』だったのです。Toscanaに惚れてワイン造りを始めたSergioですが、彼の夢は『Brunello』を作る事でした。つまり、ワイン造りの理想であり完成形としたのは究極のChiantiでは無く究極のBrunelloでした。但し、彼が間借り、後に購入出来たのはChianti地区の畑。その地においてSv100でワインを造ったとしてもBrunelloを名乗れませんが、それでも彼は、その地でBrunelloを超える存在のSv100を造り続けたかったのです(Sergioの実子で現オーナーのMartino談)。私が大好きなVecchie Terre di MontefiliのRoccaldo AcutiもBrunelloに恋い焦がれ、Sergioと同様の試みを行い、Bruno di Rocca(Roccaldo のBrunelloの意と言われる)をリリースしますが、初リリースとなる1983からSv100に拘る事無く、エノロゴVittorio Fioreの意見に従いCSを入れ(初ヴィンテージ1983はSv50&CS50)、酒質を和らげてリリースします。が、Sergioは断固混ぜ物拒否、外来種拒否。Le Pergole Torte=Sv100を頑として曲げず、その品質に納得できない場合は生産せず、SvをMontevertine Riserva等に遠慮なく回し、金に換え、次回への投資を行ってきました。その為Montevertine RiservaはLe Pergole Torteのセカンドであるというイメージが付きましたが、Le Pergole Torte=究極のBrunello、Montevertine Riserva=理想のChiantiと、そもそもの立ち位置が違うのです。

 

もしSergioがBrunello地区に農家を購入出来ていたら?

Gianfranco Solderaの様な拘り満載のワインが誕生していたでしょう。但し、Brunelloとしては生産しなさそうです。組合に所属するも、何かをきっかけとして怒って脱退し、今の様な女性の顔ラベルのワインを造っている事でしょう。

Gianfranco SolderaとSergio Manettiは共通項が多い。他地方生まれ、転職者(Solderaはミラノ出身の保険外交員、Manettiはミラノ生まれ、20歳に引越しPoggibonsiの鉄鋼業からの転身)、G.Gambelliの関与、組合と喧嘩して脱退、セラー設計に凝る等々。もちろん性格も似ていそうです。案外、意気投合したかも。見たかったですね、そんな光景。

 

何れにせよ、Manettiはトスカーナ土着品種の他のブドウ品種には目もくれなかった事は事実です。

頑固者、いいですね。

 

この項 了。

Montevertine Riservaの前身、Chianti Classico Riserva1978

Montevertine の畑

モンテヴェルティーネのカンティーナ

Gambero Rosso ガイド Vini d'Italia1989の評価

Montevertine 発行のヴィンテージチャート

Vini d'Italia20周年ガイドの評価