チリウーティ:バルバレスコ(セッラボエッラ)1983 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1988 Gambero Rosso Vol. 64

Cigliuti-Barbaresco (Serraboella) 1983

 

Serraboella (Neive)、1.0h、南~西だれ、250~300 m slm、痩せている、粘土質、石灰質、凝灰岩、平均樹齢25~55年、2000株/h、Resa:40~45qli  Guyot

醸し15~20日、Inox、28~32度。温度管理、熟成26カ月、1000~1700lスロヴェニアンオーク大樽とフランストノー&バリック、平均樽齢10~20年、1964~、4000本、清澄:アイシングラス(アガーではない)

なお、大樽はVeneta Botti(伊・Veneto)、使用率60%。

トノー&バリックはVicard(仏)、GAMBA(伊・Asti)のライトトースト、使用率40%。

※Borgonovoを南東へ。旧県道51号線Serraboella集落内Cigliutの建物で下車。南西へ200m。

 

相変わらず小さい生産者です。私が渡伊していた頃はSerraboellaを含め4アイテム、4hで25000本。

今は7アイテムで6h+1.5hレンタル、35000本。

他の会社は大きくなっているのに、ここは変わっていないなあと、逆に嬉しくなります。スタイルは可憐。いつも薫りが綺麗に抜け余韻が長い。輪郭がはっきりした味わいは全く挑発的では無く、あくまでもたおやかで優しいのですが、決して途中で消えない。マッチョでは無く細い体躯でも持久力のあるタイプです。派手さや外連味が一切無く、偽りのない赤は近年珍しい。昔も今も変わりありません。

 

まず地質。セッラヴァリアーノとトルトニアーノが混ざるので、くっきりと固い性質のワインが出来やすい。更に樹齢も古く根の張りも良いので、その為SerraboellaではCigliut基準で言うところの『強い酒質』になります。次に日照条件。ここは今までご紹介したピエモンテの生産者の畑の中で、唯一の綺麗に西だれ斜面。実はCigliutiのカンティーナが一番高い場所にあり、カンティーナ前の旧県道が丘陵の峰部分を南北に走る形で続いています。この畑はそこから西へ下がった場所になります。

ブドウが一番発育したい夏は、ピエモンテでも長く強い西陽が差し込みます。夕陽に含まれる波長の長い遠赤色光は植物の成長を大きく促します。山間部の様な急傾斜ではないので、日中は南からの太陽光も受けやすく照射時間も不足しません。気温が穏やかになった夜から植物の成長が始まるので、太陽光を燦燦と浴びた濃厚な赤を目指しておらず、線が細くとも輪郭がはっきりしたタイプを好むCigliutiには好条件と言えるでしょう。更に、多少強くなった酒質を和らげる為に、念入りに少量をバリックにかけます。こうして出来上がったBarbarescoは、キリキリと磨き上げられたしなやかな身体を持ちます。この酒質が、生産本数も多くなく、あくまでも家族経営に拘り手の届く範囲で身の丈に合った商売を行っている彼らの性格と良く合っていて、更に他の生産者と違う酒質こそが、個性の強いピエモンテの生産者の中で一目置かれ続けている理由です。写真のボルドー720ml瓶は飲んだ事が無く、現行アルベイサになってから飲み始めました。印象に残っているのはエティケッタの79。92年に飲みましたが、まだまだ元気。線が細い分、細部までしっかり堪能でき、私の中で綺麗に熟成したBarbarescoとはこれ、という見本になりました。

 

最近では09, 10, 11, 13、更にVie Erte04で3Bを獲得。Vie Erteが3Bを獲得するのはまだ先かと思っていましたが、努力は裏切らないですね。とても良い生産者です。是非とも応援しましょう。

 

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1979

 

チリウーティのカンティーナ場所と畑場所