ガッロ(ヴィエ ディ ロマンス):シャルドネ 1986 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1988 Gambero Rosso Vol. 26

Stelio Gallo (Vie di Romans)-Chardonnay 1986

 

Vini d’Italia88のTreBicchieri受賞ワインにちなんで書いてます。今回で26話目。Vie di Romans。
 

 いいですね。Friuliというクセの強いワインを産する傾向のある地域の生産者としては、素直で高品質なワインを多品目安定供給。イタリアの生産者は白赤の得手不得手がはっきりしている事が多いのですが、Vie di Romansは全てのラインナップをオンリストしたいと思う数少ない生産者です。クリュ違い・INOX又は樽使用・混醸品などどれをとっても美味い。ここがクリュワインと混醸タイプの二種しか造っておらず、スタンダードDOCを生産していないのはご存知の通り。ビジネス用のノーマルを生産せず、全てスペシャルキュヴェタイプのワインとして生産し続けているという事実は、誠に素晴らしい。誉め言葉しかありません。

 

 但し、Vie di Romansは、圧倒的に現行スタイルの方が昔のスタイルよりも良いと思う生産者です。このCh86(クリュ区別無し)には残念ながら賛同できませんでした。以前書いたGravnerも樽を使用していた頃の作品ですね。Vie di Romansも同様に少し肩ひじを張り、当時主流だった抽出きつめ・樽熟スタイルのワインで高評価を狙っていた時代です。86~89は良くも悪くも粗削りの出来で、確かにその粗野っぽさが個性となる生産者もいますが、綺麗に作るタイプのVie di Romansには、その粗野さが似合わず、当時はむしろ異質と感じていました。例えば赤のVoos dai Ciamps87。87という難しい年ながらも、たおやかで繊細且つ滑らか。全く威圧的なところが無く、トスカーナのMerlotとは次元の違う出来。それに比べChは、という感想。但し、当時からCh以外の白ではINOX使用品もあり、それらは葡萄品種の特性を良く表していたのです。彼らは自らの判断を変え、90年以降、ChとSBをクリュの特性に合わせ二種の仕込みで生産すると決断します。結果?皆さんよくご存じでしょう。

 

 こんな高い技術を持つ彼らですが、社名にクレームがつくというちょっとした事件が起こります。一族の名前”Gallo”を会社名に使用していただけなのですが、その名が気に食わないと米の同名ワイン業者からクレームが入り、現在の会社名”Vie di Romans”に変更する事になりました(ワインラベルは90リリースから変更)。
 

 高い志を持った彼らは、先祖の名前が使用出来なくなっても少しも困らなかったと思います。それは今までの功績とこれからの歴史が証明するでしょう。

 

やっぱり誠に素晴らしい。誉め言葉しかありません。

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