魔法の光
「ハ・ティム、明るくできるか?」
入り口から差し込む日光はここまでは届かない。そうなると剣より魔法の出番となる。
リューゲンが声をかけたときにはすでに詠唱は済んでいたので、ハ・ティムが念を送った先、その手にある杖の先端から光の玉が生まれていた。
光が三人の顔を照らす。
「さすがスペルユーザー。一人は欲しいよな」
「時間はかけられないよ。二人とも早くね」
ハ・ティムはトーンの高い声で言った。その声はやや中性的で、彼はそのことをコンプレックスに思っているが仲間ふたり、リューゲンとターシルからは”気にするな”と一蹴された。
彼らに仲間入りした頃、約一年前だったか。
「傭兵とかやってると細かいことに頓着していられなくなる」とは言うが・・・子供の頃からの悩みを軽く見られても、とは思う。
少しは気楽になったか、なんて思わないで欲しい。
幾度となく女のフリをさせられた。逃げるためとはいえ・・・・。
「さっすがスペルユーザー! なんでもあり!」
「リューゲンはいつか殺すよ。僕がもっと強い魔法を覚えたらね・・・・」
「自分のことを僕、っていってるうちは無理だ」
「だよなあ? ターシルもそう思うだろ?」
無口なターシルが茶々を入れるのは珍しかったが、リューゲンとターシルの息の合った部分をさりげなく見た気はした。
大陸を回っていた頃。まあ、命懸けの脱出中に大した余裕だったと思う。
三人がこんなところに潜った理由はひとつ。
マリアのために氷を大量にとるためだ。
ハ・ティムだけではスペルユーザーが足らない。こと治療魔法より攻撃系の術を得意とするハ・ティムは治療魔法の習得が遅れがちである。
僧侶はどうしても必要だ。マリアという高僧に出会えたのは幸運だったが、そう簡単に傭兵あがりの男たちについて行くほど軽い女ではない。
杖の先の光。こうしている間にも、術者の精神力は奪われていく。
(スペルユーザーも楽じゃないんだよ、と言ってもまた笑われるんだろうね)