魂の還る国 | 真説ミリアムの魔術書・武術家たちの誇り (THE REAL FIGHTERS) 

魂の還る国






「寂しい場所ね」


ケイティが気がついたのは自分のいる位置、場所、そして命。


半年前、サムソンの師匠であるウィルソンに、剣の稽古をつけてもらうため、と”ペケージャル”を旅立った。

ウィルソンの住む”バコスタ島”へ行くための海底トンネルは、果たしてどんな場所だったのだろうか? そう思う。


ケイティは知らされていないものの、剣術のスキルを身につける代わりに与えられたペナルティ、”感謝の気持ちを忘れないこと。それは三回まで”は、まだ一回しか破っていない。


それ以前の問題なのだ。


トンネルの入り口付近で、生まれて初めてモンスターと遭遇し、剣術の技能を試すことなく死んでしまった。


元から技術がどうという問題ではなかった。初めて遭遇したモンスターに心も体も恐怖で強張り、指先ひとつ動かすことはかなわなかった。


ゴルドの「剣を握レ! ケイティ、ケイティ!」そんな悲痛な声とサムソンの顔を思い浮かべながら、ケイティはモンスターの突然の体当たりひとつで、宙に飛ばされ、岩場に全身を強く打ちつけられ、そこで絶命した。

最期に聴こえたのはゴルドの声。


「死んだんだ・・・・そのはずだわ」

でも剣はある。

肉体は幻のようで、感覚というものが欠けている。


ゴルドを捜そうか? どうすればいいのか。


”死”という現実は受け入れられた。人は肉体が死を迎えると、こうやってしばらく”意識”だけの存在になるのか?

いまとなっては、わかってもどうにもならないが。



剣が手にあるということ。

彼女はまだペナルティを一回しか冒していないため、肉体は滅びても、まだ剣術だけは残されている


つまり。


死んでも、まだ何かできるということ。




「畜生・・・・お父さん、お母さん・・・・・」


「あ・・・・・・」


少年の声が聴こえた。誰だろうか?


行ってみよう。


人にはもう見えない姿となったケイティは剣を握って、声のする方角へ向かった。








橋がある。

その先にどうやら城があるようだ。そしてここはリースロット大陸ではない土地であるらしい。なんとなく、感じた。


橋の中間には少年が立っている。


声の主は彼だろうか。

遠目にも怪我を負っているのがわかる。そして疲れきった様子でそこに立ち尽くしている。


「ねえ! 聴こえる、あなた、ここで何しているの?」


ケイティは少年に向かって大きく手を振ってみせた。

少年は驚いたようにケイティを見た。



「ここに人がくるなんて・・・・・」


少年は驚きを隠せない。


「わたしはケイティっていうの! あなたは?」


「・・・・エヴァン・・・・・」


「近くに行ってもいいかな?」


「・・・・・いいよ」


ケイティは橋を渡り始めた。