むかし、
パン屋で働いてた

そのパン屋はスーパーの中に入っているパン屋で
だいたい朝~夕方までは
店長と四十歳ぐらいの主婦の人とわたしの三人
わたしはほとんど、パンの陳列とレジを担当

そのパン屋では
朝一で出せるように
早くから準備して朝一クロワッサンとロールパンと食パンを焼く

毎週火曜日は、ホテル食パンとゆう、ホテルの食パンみたいな山型の、外はパリっとして中はふんわりした、美味しい食パンを予約優先で販売してた

だいたい同じ人が予約していく
火曜日までに店に寄って予約していったり、電話が来たり
人気で、飛び入りは断ることもあった

長かったわたしはわりと店の看板になって
色んなお客さんと仲良くなった


火曜日は朝からホテル食パンの予約者が食パンを取りにくるから忙しかった
焼きたてを渡せるように
一部は10時焼き上がりぐらい
二部は昼ぐらい

だいたい誰が何時頃来るか分かってくる
スーパーで買い物してから最後に寄るおばちゃんもおるし
朝開店前からウロウロしてるおじいちゃんも
いつもお菓子をくれる金持ちそうな主婦も

その中で
西野さんていう、
毎週ホテル食パンを10時半に来て買って行く人がいた

推定45~50歳くらいで
背が高くて眼鏡をかけた西野さん

いつもホテル食パン耳つきで六枚切り

取りに来ると
垂れ目が笑顔でさらに垂れて
「ありがとう、今日は寒いな」
とか
「ありがとう、今日も頑張れ」
とか
ちょっとした会話して
わたしも、
「西野さん、ありがとうございました」
と笑顔で言って
無口そうな西野さんは、
いつも笑顔だけ残して帰っていく


なんだか嬉しかった

それが毎週続いて
ある火曜日のこと

10時をすぎても10時半になっても
西野さんが来ない
何か用事かな?と思っていたら
11時頃
45~50歳くらいの主婦みたいな女性がレジに来て

「あの…西野ですが」
と言った

わたしはびっくりして
「あ、西野さんの奥さんですか!」
と言った

すると奥さんは

「いつも食パンを…買いにきてる主人がケガで入院して来られなくて」

「で、いつも、娘、娘って。今日も娘が待っとるからって。」

奥さんは恥ずかしそうに笑って言った

娘…

そうか
娘か
なんかすごい嬉しかった

そうゆうくだけた会話もあまりしたことない西野さんやけど
本当はそんな風に思ってくれとったんや

照れ屋なあの顔が浮かんできた

「娘によろしく言うといてくれって」

そう言って奥さんはぺこりと頭を下げて食パンを買って帰っていった


次の火曜日
腕のギブスを肩からさげて骨折中の
西野さんがあらわれた

「ありがとう、今日も、頑張れ」

いつもの笑顔で垂れ目が垂れた

「西野さん、ありがとうございました」

この一週間
西野さんにめちゃくちゃ会いたかった
火曜日が待ち遠しかった
それは
どうゆう感情か分からなかったけど
西野さんに
わたしの姿を見せたかった娘と言ってくれてありがとうと、言えやんけどなんとかテレパシーで伝えたかった




ってゆうパン屋の思い出
なんか突然思い出した
西野さんの顔がうっすら出てきた
あれからそのあと、パン屋が違う店に変わって
わたしもやめて違うとこで働き出したけど
西野さんは
どう思ったかな
お別れもないまま、やったけど


今頃ふとそんな風に思う
正確に言うと
元彼に

最近ハマっとる韓国ドラマの
いいな、と思ったチャン・ドンゴンのセリフをちょっと変えて言ってみた

「わたしは、あなたが待ってるって言ってくれたことを忘れるから、あなたもわたしが味方でいてって思っとることは、忘れて」

「ん?うん」


やっぱり理解できやんだか
めちゃいいシーンの名ゼリフやのに
マヌケなヤツ



たった一言を言うために電話してきたのに
結局
あーやこーや色々言って
何言いたいんか分からんくなって
待ってる、のただ一言がなかなか言えやん
かわいいヤツ

こんな細かいとこまで分かってしまうわたしも
なかなかかわいいヤツ
生まれ変わる

って
言葉にするのは簡単やけど


言葉にしやな始まらない


今から色々始まると思うと

自分の人生が泣きたくなるけど

反対に

この上ない
やる気が溢れてくる

きた

やっぱ仕事っていいわ

苦しいことが99あっても

残りの1%
やる気があるから

やってやる


やっぱ

仕事っていい

仕事って
いいよ!