アウシュビッツ収容所の隣で暮らす所長のルドルフ・ヘス一家の話。

観る前から、音が効果的に使われているという前情報があって、確かに音が怖い。

それぞれのシーンで、これはどういう意味だろうと思うところがあちこちにあり、帰ってから検索して内容が分かった部分も多かった。

 

ヘス夫妻以外の人物はあまり深い描写がないので、家にいる人たちも誰が家政婦で、誰が友人なのかよく分からないし、子供たちも結局何人いたんだかよく覚えていない。常に黒い犬が家や庭をうろうろしていて、あまりかわいがられるでもなく。そこが逆にリアルなのかもしれない。良く分からないことが多いからのぞき見している感じが強いんだろう。

 

ネットの解説記事を読むと同じように書いてあるものもあるが、彼らのような生活を批判することが自分にできるのか自信がない。戦時中、あんなに良い暮らしができたらな、それを享受しようとする気がする。そういう考え方が良くないという認識がその時代になかったのだから。今、LGBTに対しての認識が数十年前と全然違っていて、自分の若い頃、そういう人たちを差別するようなことを日常に言っていたのを時々思い出す。その時は、そういう感覚が一般的だったから悪いなんて全然思わなかったけれど、今の時代感覚で改めて思い返すと、良くない発言だったなと思う。それを人の生死や戦争と同じレベルでは言えないかもしれないけれど、周りの常識がそうだったなら、それを普通に思うことは仕方のないことだったのかもしれない。

 

映画の中で、ユダヤ人たちの為に、リンゴを置きに行く少女が出てくる(実在のモデルがいたらしい)。それはこういう時代の救いではある。